不法行為によって扶養者が死亡した場合における被扶養者の将来の扶養利益喪失による損害額の算定方法

(平成12年9月7日最高裁)

事件番号  平成11(受)94

 

最高裁判所の見解

 

1 不法行為によって死亡した者の配偶者及び子が

右死亡者から扶養を受けていた場合に、

加害者は右配偶者等の固有の利益である扶養請求権を侵害したものであるから、

右配偶者等は、相続放棄をしたときであっても、

加害者に対し、扶養利益の喪失による損害賠償を

請求することができるというべきである。

 

しかし、その扶養利益喪失による損害額は、

相続により取得すべき死亡者の逸失利益の額と

当然に同じ額となるものではなく、個々の事案において、

扶養者の生前の収入、そのうち被扶養者の生計の維持に充てるべき部分、

被扶養者各人につき扶養利益として認められるべき比率割合、

扶養を要する状態が存続する期間などの

具体的事情に応じて適正に算定すべきものである。

 

2 これを本件についてみるに、原審は、

Dの前記債務の負担状況にかんがみ、

扶養利益喪失による損害額の算定に当たり、

同人の死亡時前年度の年収七八〇万円をそのまま用いることなく、

前記賃金センサスによる平均年収額五四四万一四〇〇円を

用いるべきであると判断しているが、

Dの債務負担額が約四八億円にも達していることにかんがみると、

なおこれを是認することはできない。

 

また、Dの逸失利益全額を

そのまま被上告人らの扶養利益の総額とし、

これを被上告人らの相続分と同じ割合で分割して、

各人の扶養利益の喪失分とした点、

並びに被上告人B2及び同B3については、

特段の事情がない限り、Dの就労可能期間が終了する前に成長して

扶養を要する状態が消滅すると考えられるにもかかわらず、

右扶養を要する状態の消滅につき適切に考慮することなく、

扶養利益喪失額を認定した点は、前記1に判示した事項を

適正に考慮していないといわざるを得ず、

扶養利益喪失による損害額の算定につき、

法令の解釈適用を誤ったものというべきである。

 

四 以上のとおり、右に述べた各点について、

原審の判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

 

そして、以上の説示に従い、被上告人らの喪失した扶養利益の額について

更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととする。

 

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