民法437条,民法442条,民法719条

(平成10年9月10日最高裁)

事件番号  平成9(オ)448

 

最高裁判所の見解

1 甲と乙が共同の不法行為により他人に損害を加えた場合において、

甲が乙との責任割合に従って定められるべき

自己の負担部分を超えて被害者に損害を賠償したときは、

甲は、乙の負担部分について求償することができる

(最高裁昭和六〇年(オ)第一一四五号同六三年七月一日第二小法廷判決・

民集四二巻六号四五一頁、最高裁昭和六三年(オ)第一三八三号、

平成三年(オ)第一三七七号同年一〇月二五日第二小法廷判決・

民集四五巻七号一一七三頁参照)。

 

2 この場合、甲と乙が負担する損害賠償債務は、

いわゆる不真正連帯債務であるから、

甲と被害者との間で訴訟上の和解が成立し、

請求額の一部につき和解金が支払われるとともに、

和解調書中に「被害者はその余の請求を放棄する」旨の条項が設けられ、

被害者が甲に対し残債務を免除したと解し得るときでも、

連帯債務における免除の絶対的効力を定めた

民法四三七条の規定は適用されず、

乙に対して当然に免除の効力が及ぶものではない

(最高裁昭和四三年(オ)第四三一号同四八年二月一六日第二小法廷判決・

民集二七巻一号九九頁、最高裁平成四年(オ)第一八一四号

同六年一一月二四日第一小法廷判決・裁判集民事一七三号四三一頁参照)。

 

しかし、被害者が、右訴訟上の和解に際し、

乙の残債務をも免除する意思を有していると認められるときは、

乙に対しても残債務の免除の効力が及ぶものというべきである。

 

そして、この場合には、乙はもはや被害者から

残債務を訴求される可能性はないのであるから、

甲の乙求償する場合においても異なるところはない

(前掲昭和六三年七月一日第二小法廷判決参照)。

 

4 これを本件について見ると、本件和解調書の記載からは

Iの意思は明確ではないものの、記録によれば、

Iは、被上告人に対して裁判上又は裁判外で残債務の

履行を請求した形跡もなく(ちなみに、本件和解時においては、

既に右残債権について消滅時効期間が経過していた。)、かえって、

上告人が被上告人に対してEの負担部分につき

求償金の支払を求める本件訴訟の提起に協力する姿勢を示していた

等の事情がうかがわれないではない。

 

そうすると、Iとしては、本件和解により被上告人との

関係も含めて全面的に紛争の解決を図る意向であり、

本件和解において被上告人の残債務をも

免除する意思を有していたと解する余地が十分にある。

 

したがって、本件和解に際し、Iが被上告人に対しても

残債務を免除する意思を有していたか否かについて審理判断することなく、

上告人の被上告人に対する求償金額を算定した原審の判断には、

法令の解釈適用の誤り、審理不尽の違法があるというべきである。

 

5 そして、仮に、本件和解における上告人の

支払額二〇〇〇万円を基準とし、

原審の確定した前記責任割合に基づき算定した場合には、

本件共同不法行為における上告人の負担部分は八〇〇万円となる。

 

したがって、上告人は被上告人に対し、

その支払額のうち一二〇〇万円の求償をすることができ、

右の違法はこの範囲で原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

この点をいう論旨は理由がある

(なお、上告人は、当審において、不服申立ての範囲を

一二〇〇万円の求償金請求に関する部分に限定している。)。

 

四 以上によれば、その余の上告理由について判断するまでもなく、

原判決中、本判決主文第一項掲記の部分は破棄を免れず、

右部分については更に審理を尽くさせる必要があるので、

これを原審に差し戻すこととし、また、遅延損害金の起算点に

関する原審の判断は正当として是認することができるから、

上告人のその余の上告を棄却することとする。

 

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