民法442条,民法501条,民法675条,商法511条1項,和議法5条

(平成10年4月14日最高裁)

事件番号  平成6(オ)2137

 

最高裁判所の見解

1 共同企業体は、基本的には民法上の組合の性質を有するものであり、

共同企業体の債務については、共同企業体の財産がその引き当てになるとともに、

各構成員がその固有の財産をもって弁済すべき

債務を負うと解されるところ、

共同企業体の構成員が会社である場合には、

会社が共同企業体を結成してその構成員として

共同企業体の事業を行う行為は、

会社の営業のためにする行為(附属的商行為)にほかならず、

共同企業体がその事業のために第三者に対して

負担した債務につき構成員が負う債務は、

構成員である会社にとって自らの商行為により

負担した債務というべきものである。

 

したがって、右の場合には、共同企業体の各構成員は、

共同企業体がその事業のために第三者に対して負担した債務につき、

商法五一一条一項により連帯債務を負うと解するのが相当である。

 

これを本件についてみると、前記事実関係によれば、

本件共同企業体の構成員である上告人と被上告人は、

建築工事の請負等を目的とする会社であるから、

昭和六二年二月二八日時点での

本件工事の出来高に対応する費用として

本件共同企業体が下請業者等に対して負担した債務につき

連帯債務を負うと解されるのであり、

その負担割合は各二分の一であるから、

上告人は、前記一6の弁済により、被上告人に対して

弁済額の二分の一の求償権を取得したと認められる。

 

2 和議債務者に対して債務を負う者が和議開始の申立てを

知った後に和議債務者に対する債権を取得した場合は、

右債権を自働債権として相殺をすることは原則として許されないが、

右債権の取得が和議開始の申立てを知る前の原因に基づくものであるときは、

右債権を自働債権として相殺することが

できるところ(和議法五条、破産法一〇四条四号)、

連帯債務関係が発生した後に連帯債務者の一人が

和議開始の申立てをした場合において、

他の連帯債務者が和議開始の申立てを知った後に

債権者に債務を弁済したときは、右弁済による求償権の取得は、

右にいう「和議開始の申立てを知る前の原因に基づく」

ものと解するのが相当である。

 

けだし、右の場合には、和議開始の申立ての前に求償権の

発生の基礎となる連帯債務関係が既に発生しており、

右のような求償権による相殺を認めても、

和議債権者間の公平を害することはなく、

和議開始の申立てを知った後に取得した債権による

相殺を禁止する和議法五条、

破産法一〇四条四号本文の趣旨に反しないからである。

 

本件においては、上告人の前記一6の弁済に係る債務は、

被上告人が和議開始の申立てをした昭和六二年二月二八日の時点において

本件共同企業体が負担していた債務であり、

上告人及び被上告人が右債務につき連帯債務を負っていたのであるから、

上告人が前記一6の弁済により取得した求償権のうち、

和議開始の申立てを知った後の弁済により取得したものは、

右にいう「和議開始の申立てを知る前の原因に基づく」ものとして、

相殺の自働債権とすることができると解される。

 

右と異なる原審の前記二2の判断には、

法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は原判決の

結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

この点をいう論旨は理由があり、

原判決中上告人敗訴部分は、破棄を免れない。

 

3 記録によれば、昭和六二年一〇月一九日、被上告人について、

和議債権の一部免除等を和議条件とする和議認可決定がされ、

右決定が確定したことがうかがわれる。

 

ところで、連帯保証人の一人について

和議認可決定が確定した場合において、

和議開始決定後の弁済により右連帯保証人に対して

求償権を取得した他の連帯保証人は、

債権者が全額の弁済を受けたときに限り、

右弁済によって取得する債権者の

和議債権(和議条件により変更されたもの)の限度で

右求償権を行使することができると解されるところ

(最高裁平成三年(オ)第四九一号同七年一月二〇日第二小法廷判決・

民集四九巻一号一頁)、右の理は、連帯債務者間の求償関係についても

変わるところはないから、連帯債務者の一人について

和議認可決定が確定した場合において、

和議開始決定後の弁済により右連帯債務者に対して

求償権を取得した他の連帯債務者は、債権者が全額の弁済を受けたときに限り、

右弁済によって取得する債務者の和議債権(和議条件により変更されたもの)の限度で

右求償権を行使することができると解される。

 

そして、右にいう求償権の行使には、

和議債務者に対する履行の請求のみならず、

求償権を自働債権として和議債務者の債権と

相殺することも含まれるというべきであり、

右の限度で相殺を認めることは、和議開始決定後に

取得した和議債権による相殺を禁じた和議法五条、

破産法一〇四条三号の規定に反するものではない。

 

本件において、上告人の求償権のうち

和議開始決定後の弁済により

取得したものについては、右に従い相殺の自働債権として

行使し得る範囲を確定する必要があり、

右の点を含め更に審理を尽くさせるため、

上告人敗訴部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

 

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