民法481条1項,民事保全法50条1項,民事保全法50条5項,民事執行法145条4項

(平成18年7月20日最高裁)

事件番号  平成16(受)226

 

この裁判では、

第三債務者が仮差押命令の送達を受けた時点で

仮差押えの対象となった債権の弁済のために取引銀行に対し

先日付振込みの依頼をしていた場合において上記送達後にされた

振込みによる弁済を仮差押債権者に対抗することの可否について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1) 金銭の支払を目的とする債権に対する仮差押えの執行は,

保全執行裁判所が第三債務者に対し債務者への弁済を

禁止する命令を発する方法により行うものとされ(民事保全法50条1項),

弁済禁止の命令を受けた第三債務者がその対象と

なった債権の弁済をした場合は,差押債権者は

その受けた損害の限度において更に弁済すべき旨を

第三債務者に請求することができる(民法481条1項)。

 

この弁済禁止の効力が生ずるのは,

仮差押命令が第三債務者に送達された時である

(民事保全法50条5項,民事執行法145条4項)。

 

前記事実関係によれば,本件仮差押命令は,

本件退職金債権につき,第三債務者である

被上告人からA銀行に対する本件振込依頼がされた日の

翌日に被上告人に送達されたが,その時点では

まだA銀行から債務者であるBの本件口座への振込みはされておらず,

同振込みは本件仮差押命令送達の日の翌日にされたことが明らかである。

 

(2) 依頼人から振込依頼を受け,その資金を受け取った銀行(仕向銀行)が

これを受取人の取引銀行(被仕向銀行)に開設された

受取人の預金口座に入金するという方法で

隔地者間の債権債務の決済や資金移動を行う振込手続が,

信頼性の高い決済手段として広く利用されていることは,

原判決の判示するとおりであるが,一般に,振込依頼をしても,

その撤回が許されないわけではなく,銀行実務上,

一定の時点までに振込依頼が撤回された場合には,

仕向銀行は被仕向銀行に対していわゆる組戻しを依頼し,

一度取り組んだ為替取引を解消する取扱いが行われている

(全国銀行協会連合会が平成6年4月に制定した

振込規定ひな型・全銀協平6・4・1全事第8号参照)。

 

本件においても,前記事実関係によれば,

被上告人は本件仮差押命令が送達された日

(本件退職金が本件口座に振り込まれる日の前日)の

午後3時までにA銀行茂原支店の窓口に赴けば

振込依頼の撤回の手続を執ることが

可能であると知っていたことがうかがわれる。

 

(3) 以上によれば,取引銀行に対して

先日付振込みの依頼をした後にその振込みに係る債権について

仮差押命令の送達を受けた第三債務者は,振込依頼を撤回して

債務者の預金口座に振込入金されるのを止めることができる限り,

弁済をするかどうかについての決定権を依然として

有するというべきであり,取引銀行に対して

先日付振込みを依頼したというだけでは,

仮差押命令の弁済禁止の効力を免れることはできない。

 

そうすると,上記第三債務者は,原則として,

仮差押命令の送達後にされた債務者の預金口座への振込みをもって

仮差押債権者に対抗することはできないというべきであり,

上記送達を受けた時点において,

その第三債務者に人的又は時間的余裕がなく,

振込依頼を撤回することが著しく困難であるなどの

特段の事情がある場合に限り,

上記振込みによる弁済を仮差押債権者に

対抗することができるにすぎないものと解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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