民法703条所定の「損失」

(平成17年7月11日最高裁)

事件番号  平成16(受)2134

 

銀行が相続財産である預金債権の全額を共同相続人の

一部に払い戻した場合について他の共同相続人に

その法定相続分相当額の預金の支払をした後でなくても

当該銀行には民法703条所定の「損失」が発生するものとされた事例

 

最高裁判所の見解

前記事実関係等によれば,被上告人らは,

本件預金のうち己の法定相続分相当額の預金については,

これを受領する権限がなかったにもかかわらず,

払戻しを受けたものであり,また,

この払戻しが債権の準占有者に対する

弁済に当たるということもできないというのである。

 

そうすると,本件払戻しのうち己の法定相続分相当額の

預金の払戻しは弁済としての効力がなく,己は,

本件預金債権のうち自己の法定相続分に相当する

預金債権を失わないことになる。

 

したがって,上告人は,本件払戻しをしたことにより,

本件預金のうち己の法定相続分に相当する金員の損失を

被ったことは明らかである。

 

そして,本件払戻しにより被上告人らが己の法定相続分に

相当する金員を利得したこと,被上告人らの利得については

法律上の原因が存在しないこともまた明らかである。

 

したがって,上告人は,被上告人らに対し,

本件払戻しをした時点において,本件預金のうち

己の法定相続分に相当する金員について,

被上告人らに対する不当利得返還請求権を取得したものというべきである。

 

なお,前記事実関係によれば,被上告人らは,

本件払戻しを受けた時点においては,

本件預金のうち己の法定相続分相当額の預金の

受領権限を有しないことにつき悪意であったとまでは

認められないものの,乙事件に係る訴状の送達を受けた日である

平成15年4月5日から悪意となったものと認めるのが相当である。

 

以上説示したところによれば,被上告人らは,上告人に対し,

それぞれ739万4976円及びこれに対する

平成15年4月5日から支払済みまで年5分の割合による

利息金の支払義務を負うが,平成10年6月24日から

平成15年4月4日までの利息金の支払義務は負わないこととなる。

 

そうすると,論旨は,この限度で理由があり,

これと異なる原審の判断には判決に影響を

及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

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