民法724条後段の除斥期間

(平成21年4月28日最高裁)

事件番号  平成20(受)804

 

この裁判では、

被害者を殺害した加害者が被害者の相続人において

被害者の死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出したため

相続人がその事実を知ることができなかった場合における

上記殺害に係る不法行為に基づく損害賠償請求権と

民法724条後段の除斥期間について裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

民法724条後段の規定は,

不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたものであり,

不法行為による損害賠償を求める訴えが

除斥期間の経過後に提起された場合には,

裁判所は,当事者からの主張がなくても,

除斥期間の経過により上記請求権が消滅したものと

判断すべきである(最高裁昭和59年(オ)第1477号

平成元年12月21日第一小法廷判決・

民集43巻12号2209頁参照)。

 

ところで,民法160条は,相続財産に関しては

相続人が確定した時等から6か月を経過するまでの間は

時効は完成しない旨を規定しているが,その趣旨は,

相続人が確定しないことにより権利者が時効中断の機会を逸し,

時効完成の不利益を受けることを防ぐことにあると解され,

相続人が確定する前に時効期間が経過した場合にも,

相続人が確定した時から6か月を経過するまでの間は,

時効は完成しない(最高裁昭和35年(オ)

第348号同年9月2日第二小法廷判決・

民集14巻11号2094頁参照)。

 

そして,相続人が被相続人の死亡の事実を知らない場合は,

同法915条1項所定のいわゆる熟慮期間が経過しないから,

相続人は確定しない。

 

これに対し,民法724条後段の規定を字義どおりに解すれば,

不法行為により被害者が死亡したが,

その相続人が被害者の死亡の事実を知らずに

不法行為から20年が経過した場合は,

相続人が不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する機会がないまま,

同請求権は除斥期間により消滅することとなる。

 

しかしながら,被害者を殺害した加害者が,

被害者の相続人において被害者の死亡の

事実を知り得ない状況を殊更に作出し,

そのために相続人はその事実を知ることができず,

相続人が確定しないまま除斥期間が経過した場合にも,

相続人は一切の権利行使をすることが許されず,

相続人が確定しないことの原因を作った加害者は

損害賠償義務を免れるということは,

著しく正義・公平の理念に反する。

 

このような場合に相続人を保護する必要があることは,

前記の時効の場合と同様であり,

その限度で民法724条後段の効果を制限することは,

条理にもかなうというべきである

(最高裁平成5年(オ)第708号同10年6月12日

第二小法廷判決・民集52巻4号1087頁参照)。

 

そうすると,被害者を殺害した加害者が,

被害者の相続人において被害者の

死亡の事実を知り得ない状況を殊更に作出し,

そのために相続人はその事実を知ることができず,

相続人が確定しないまま上記殺害の時から20年が

経過した場合において,その後相続人が確定した時から

6か月内に相続人が上記殺害に係る不法行為に基づく

損害賠償請求権を行使したなど特段の事情があるときは,

民法160条の法意に照らし,

同法724条後段の効果は生じないものと解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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