民法951条にいう「相続人のあることが明かでないとき」
(平成9年9月12日最高裁)
事件番号 平成6(オ)2052
最高裁判所の見解
遺言者に相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合は、
民法九五一条にいう「相続人のあることが明かでないとき」には
当たらないものと解するのが相当である。
けだし、同条から九五九条までの同法第五編第六章の規定は、
相続財産の帰属すべき者が明らかでない場合における
その管理、清算等の方法を定めたものであるところ、
包括受遺者は、相続人と同一の権利義務を有し(同法九九〇条)、
遺言者の死亡の時から原則として同人の財産に属した
一切の権利義務を承継するのであって、
相続財産全部の包括受遺者が存在する場合には前記各規定による
諸手続を行わせる必要はないからである。
四 そうすると、右とは異なり、
Dには相続財産全部の包括受遺者である上告人A1が存在するにもかかわらず、
Dに相続人が存在しなかったことをもって、
同人の相続財産について民法九五一条以下に規定された
相続人の不存在の場合に関する手続が行われなければならないものとした
原審の前記判断は、法令の解釈適用を誤ったものというべきであり、
この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。
論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。
そして、本件については、貸付信託に係る信託契約の
内容等に則して各当事者の請求の趣旨及び原因を整理するなど、
更に審理を尽くさせる必要があるから、原審に差し戻すこととする。
よって、民訴法四〇七条一項に従い、
裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
スポンサードリンク