民法969条5号,民訴法247条,公証人法39条

(平成16年2月26日最高裁)

事件番号  平成13(受)398

 

最高裁判所の見解

前記事実関係によれば,

(1) 戊公証人の証言等及び己書記の陳述書の記載において,

本件公正証書の原本を利用して8年謄本を作成する

具体的な方法の細部(原本のコピーの切り取り方)に食違いがあることは

原審が指摘するとおりであるが,上記各証拠は,

本件公正証書の原本を複写したコピーの2枚目裏6行目の

第1署名欄(戊公証人の署名押印がされていたとされる部分)以降の部分を切り取り,

これに白紙の公正証書用紙をあてがって

更に複写したコピーの第1署名欄に公証人名のゴム印等を押し,

末尾の第2署名欄に戊公証人が署名押印をしたという8年謄本の

作成方法の主要な部分については,一致しており,

その内容に食違いはないこと,

(2) 本件公正証書の原本の各葉上部欄外には,

戊公証人の印による契印がされているにもかかわらず,

第1署名欄の署名及び押印のみがされておらず,また,

2枚目裏の7行目から9行目までが空欄であるにもかかわらず,

本来この部分の記載に続けて行を詰めて記載されるべき

10行目以下の印字がされていたというのは,

通常の書類作成手順に照らして不自然であること,

(3) 本件公正証書の原本が作成された平成5年6月2日には,

その原本に基づいて5年正本及び5年謄本が作成され,同日,

丁に交付されたが,その5年正本及び5年謄本には,

いずれもその2枚目裏11行目又は12行目に

戊公証人の署名押印がされているのに,

その原本についてのみ,戊公証人が殊更に

民法所定の方式に従わずに第1署名欄に署名押印をせず,

8年謄本作成の時点(平成8年4月22日)まで,

原審が説示するような不自然かつ不完全な状態のままで放置していたとは,

通常考え難いこと等が明らかである。

 

さらに,記録によれば,(4) 大阪法務局は,

毎年9月に公証原本の検閲等の公証事務の監査を行っており,

戊公証人が所属する役場においても,平成5年9月1日に

同年8月31日までの1年分の嘱託事件について抽出調査による

検閲が行われたが,その際,署名押印漏れ等の不当事例や誤りの

指摘を受けなかったこと,

(5) 8年謄本は,本件公正証書の原本の閲覧を申し出た被上告人らに対し,

戊公証人が,書庫から搬出した原本を閲覧させた上で作成したものであるが,

その際,被上告人らから,原本に公証人の署名押印がない旨の

指摘がされた形跡はないこと等の事情をうかがうことができる。

 

以上の諸点にかんがみると,前記事実関係の下で,

戊公証人の証言等及び己書記の陳述書の記載において

本件公正証書の原本を利用して8年謄本を作成する

具体的な方法の細部(原本のコピーの切り取り方)に

食違いがあること等の原審が説示する前記の事情を基に,

公務員が職務上作成した公文書たる本件公正証書の原本について,

それが作成された時点はもとより,8年謄本が作成された時点においても,

戊公証人の署名押印がなかったと認定することは,

他にこれを首肯するに足りる特段の事情の存しない限り,

経験則又は採証法則に反するものというべきである。

 

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