民訴法第1編第4章第1節口頭弁論,民訴法428条1項3号,民法1条2項,民法859条

(平成7年11月9日最高裁)

事件番号  平成4(オ)735

 

最高裁判所の見解

前示の事実関係によれば、前訴の訴え提起及び

弁護士への訴訟委任は、何らの権限のないDが

上告人のために行った無権代理行為であり、上告人本人は、

Dがこのような行為をするについて何ら関与するところがなかったのであるから、

前訴の提起及び弁護士への訴訟委任は

本来その効力を生じ得ないものといわなければならず、

たとえ原判決挙示のような事情があったとしても、

その説示するように、前訴におけるDの訴訟行為が

その後見人就職とともに有効となるとすることはできない。

 

けだし、訴訟行為は、私人である当事者の行為であっても、

裁判所が公権的に法律関係を確定するために行う

審理裁判の基礎を構成するものであり、民事訴訟法が、

無権代理人の訴訟行為が効力を生じる場合として、

追認がされた場合のみを明文で規定している趣旨に照らせば(同法五四条参照)、

訴訟行為をした無権代理人が本人の後見人に就職したからといって、

もともと私的権利義務関係の調整に係る法理で

ある信義則をそのまま用いて、追認がされた場合と同じく

有効となるとすることは相当でないからである。

 

また、家庭裁判所の審判によって選任された後見人は、

禁治産者の正当な利益を図るべき公的な責務を有しているのであり、

家庭裁判所の審判により上告人の後見人に就職したDにおいて

前訴の訴訟行為の無効を主張してした本件再審の訴えの提起は、

後見人としてのこのような責務に基づく

所為であることも看過されてはならない事柄である。

 

これと異なる見解に立って本件再審請求を排斥すべきものとした原審の判断には、

民訴法四二〇条一項三号の解釈適用を誤った違法があり、

右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり、

原判決は破棄を免れず、一審判決は取り消されるべきである。

 

そして前示したところによれば、前訴の訴え提起及び

弁護士への訴訟委任はDの無権代理行為によるものであるから、

前訴判決には、民訴法四二〇条一項三号の再審事由があることが

明らかであって、前訴判決は取り消されるべきであり、

前訴の訴え提起が無権代理行為によるものである以上、

前訴の訴えは不適法として却下されるべきものである。

 

上告人は、前訴の訴え提起行為のみは追認するとして、

前訴手続のやり直しを求めているが、無権代理人がした訴訟行為の追認は、

ある審級における手続が既に終了した後においては、

その審級における訴訟行為を一体として不可分的にすべきものであり、

一部の訴訟行為のみを選択して追認することは

許されないと解すべきであるから

(最高裁昭和五四年(オ)第八七九号同五五年九月二六日第二小法廷判決・

裁判集民事一三〇号三九三頁参照)、前訴の訴え提起行為のみを

追認することは許されない。

 

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