民訴法149条,民訴法219条

(平成17年7月14日最高裁)

事件番号  平成16(オ)1653

 

この裁判は、

債権の差押えに基づき第三者債務者として

弁済した旨の抗弁に係る主張の補正及び立証について

釈明権の行使を怠った違法があるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 第1審(平成15年11月28日判決言渡し)は,

上告人に対し,被上告人への本件代金等として

123万6564円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である

平成12年10月22日から支払済みまで

商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を命じた。

 

(2) 原審において,上告人は,次のとおり主張した。

平成15年12月3日,岐阜南税務署の担当職員(以下「担当職員」という。)は,

被上告人が滞納していた源泉所得税等を徴収するため,

第1審判決によって上告人が支払を命じられた

被上告人の上告人に対する本件代金等債権を差し押さえたことから,

上告人は,同月16日,担当職員に対し,

123万6564円及びこれに対する平成12年10月22日から

平成15年12月16日まで年6分の割合による

遅延損害金23万3761円の合計である147万0325円を支払った。

 

(3) そして,原審において,上告人は,担当職員が

作成した上告人あての平成15年12月3日付け

債権差押通知書(以下「本件債権差押通知書」という。)及び

同月16日付け領収証書(以下「本件領収証書」という。)を

書証として提出し,これらの取調べがされた。

 

本件債権差押通知書には,差押債権として,

第1審で認容された本件代金等の遅延損害金である

「金1,236,564円に対する平成12年10月22日から

支払済みまで年6分の割合による金員」との記載が,

本件領収証書には,担当職員が被上告人に係る差押債権受入金として

147万0325円を領収した旨の記載がある。

なお,本件訴訟において,本件代金等の元本債権が

差し押さえられた旨の記載がされた

債権差押通知書等の書証の提出はない。

 

3 原審は,本件代金等の額を122万6745円及び

これに対する平成12年10月22日から

支払済みまで商事法定利率年6分の割合による

遅延損害金であると認定した上,

上告人の上記2(2)の主張につき,上告人が,担当職員に対し,

本件代金等として123万6564円及び

これに対する同日から平成15年12月16日まで

年6分の割合による金員の合計額である

147万0325円を支払ったことが認められるが,

担当職員が差し押さえたのは,本件代金等債権のうち

遅延損害金債権のみであったことが明らかであるとし,

上記支払は,差押債権である123万6564円に対する

平成12年10月22日から平成15年12月16日まで

商事法定利率年6分の割合による遅延損害金である

23万3761円に係るものについてのみ弁済の効果が生じ,

その余の123万6564円については,

弁済の効果を主張することはできないとした。

 

その結果,原審は,上告人に対し,

上記有効な弁済額23万3761円を本件代金等の

元本122万6745円に対する平成12年10月22日から

平成15年12月16日まで商事法定利率年6分の割合による

遅延損害金である23万1854円に充当し,

その残額1907円を上記元本に充当した

残元本122万4838円及びこれに対する

上記支払の日の翌日である同月17日から

支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金の支払を命じた。

 

しかしながら,原審において,上告人は,

第1審判決によって上告人が支払を命じられた

被上告人の上告人に対する本件代金等債権を,

平成15年12月3日に担当職員が差し押さえたと主張し,

同日付けの本件債権差押通知書及び同月16日付けの

本件領収証書を書証として提出していたことに照らすと,

本件債権差押通知書につき,本件代金等債権のすべてが

差し押さえられた旨の記載があるものと誤解していたことが明らかである。

 

そして,原審は,上告人が,担当職員に対し,

本件代金等として123万6564円及び

これに対する平成12年10月22日から

平成15年12月16日まで年6分の割合による

金員の合計額147万0325円を支払ったことを認定するところ,

本件領収証書によれば,担当職員は,被上告人に係る差押債権受入金として

同金額を領収しているものである。

 

このような事情の下においては,原審は,当然に,

上告人に対し,本件代金等の元本債権に対する担当職員による

差押えについての主張の補正及び立証をするかどうかについて

釈明権を行使すべきであったといわなければならない。

 

原審がこのような措置に出ることなく,

同差押えの事実を認めることができないとし,

上告人の同債権に対する弁済の主張を排斥したのは,

釈明権の行使を怠った違法があるといわざるを得ず,

原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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