消費税更正処分等取消請求事件

(平成17年3月10日最高裁)

事件番号  平成16(行ヒ)278

 

この裁判では、

青色申告の承認を受けた法人が帳簿書類を税務職員による検査に当たって

適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合の

法人税法(平成11年法律第160号による改正前のもの)127条1項1号所定の

青色申告承認の取消事由該当性について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

事業者が消費税法30条1項の適用を受けるには,

消費税法施行令(平成9年3月31日以前の課税期間については

平成7年政令第341号による改正前のもの,

平成9年4月1日以降の課税期間については

平成12年政令第307号による改正前のもの)50条1項の定めるとおり,

同法30条7項に規定する帳簿等を整理し,

これらを所定の期間及び場所において,

同法62条に基づく国税庁,国税局又は

税務署の職員(以下「税務職員」という。)による検査に当たって

適時に提示することが可能なように態勢を整えて保存することを要し,

事業者がこれを行っていなかった場合には,

同法30条7項により,事業者が災害その他やむを得ない事情により

これをすることができなかったことを証明しない限り(同項ただし書),

同条1項の規定は適用されないものというべきである

(最高裁平成13年(行ヒ)第116号同16年12月16日

第一小法廷判決・民集58巻9号登載予定,

最高裁平成16年(行ヒ)第37号同年12月20日

第二小法廷判決・裁判集民事215号登載予定参照)。

 

前記事実関係によれば,上告人は,被上告人の職員から

上告人に対する税務調査において適法に帳簿等の提示を求められ,

これに応じ難いとする理由も格別なかったにもかかわらず,

帳簿等の提示を拒み続けたということができる。

 

そうすると,上告人が,上記調査が行われた時点で

帳簿等を保管していたとしても,

同法62条に基づく税務職員による帳簿等の検査に当たって

適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて

帳簿等を保存していたということはできず,

本件は同法30条7項にいう帳簿等を保存しない場合に当たり,

上告人に同項ただし書に該当する事情も認められないから,

被上告人が上告人に対して同条1項の適用がないとしてした

本件各更正処分等に違法はないというべきである。

 

法人税法が採用する申告納税制度が適正に機能するためには,

納税義務者たる法人等が帳簿書類を備え付け,

これにすべての取引を正確に記帳し,

これを基礎として申告を行うことが必要である。

 

そこで,同法は,法人等に対し,帳簿書類の備付け等を

義務付け(同法150条の2第1項),

申告の正確性を担保する手段として,税務職員に対し,

法人の帳簿書類を検査する権限を付与し(同法153条),

この検査を拒み,妨げ,若しくは忌避し,

又はこの検査に関し偽りの記載をした帳簿書類を提示した者に対する

罰則を定めている(同法162条2号及び3号)。

 

そして,同法は,帳簿書類を基礎とした正確な申告を奨励する趣旨で,

一定の帳簿書類を備え付けている者に限って,

税務署長の承認を受けて青色申告をすることを認め,

上記の者に対し課税手続や税額計算等に関する各種の特典を与えている。

 

青色申告の承認を受けている法人は,

同法150条の2第1項とは別に,同法126条1項によって

帳簿書類の備付け等が義務付けられているが,

その帳簿書類が上記の検査の対象となることは当然のことである。

 

税務署長は,青色申告の承認を行うに当たって,

青色申告の承認を申請した法人の帳簿書類の備付け,

記録及び保存が大蔵省令で定めるところに従って

行われていることを確認し(同法123条),

青色申告の承認を受けている法人に対しても,

帳簿書類について必要な指示をすることができ(同法126条2項),

この指示に従わなかった法人や,

帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は

仮装して記載した法人に対しては,

青色申告の承認を取り消すことができるとされている

(同法127条1項2号及び3号)。

 

また,税務署長は,青色申告に係る法人税の課税標準又は

欠損金額の更正をする場合には,その法人の帳簿書類を調査し,

その調査により当該課税標準又は

欠損金額の計算に誤りがあると認められる場合に限り,

更正をすることができるとされている(同法130条1項本文)。

 

さらに,同法の委任を受けた

法人税法施行規則(平成16年財務省令第27号による改正前のもの)59条1項は,

青色申告の承認を受けている法人は,

帳簿書類を7年間保存しなければならないと規定しているが,

この保存期間は,国税通則法(平成16年

法律第14号による改正前のもの)70条5項所定の

更正の制限期間に符合するものである。

 

これらの各規定は,すべて,税務職員が,

青色申告の承認を受けた法人の帳簿書類を

適時に検査することができるように,

その備付け,記録及び保存がされるべきことを

当然の前提としているものということができ,

そのようにして上記検査の円滑な実施が確保されることは,

青色申告制度の維持に不可欠なものということができる。

 

そうすると,法人税法126条1項は,

青色申告の承認を受けた法人に対し,大蔵省令で定めるところにより,

帳簿書類を備え付けてこれにその取引を記録すべきことはもとより,

これらが行われていたとしても,さらに,

税務職員が必要と判断したときにその帳簿書類を検査して

その内容の真実性を確認することができるような態勢の下に,

帳簿書類を保存しなければならないこととしているというべきであり,

法人が税務職員の同法153条の規定に基づく検査に適時に

これを提示することが可能なように態勢を整えて

当該帳簿書類を保存していなかった場合は,

同法126条1項の規定に違反し,

同法127条1項1号に該当するものというべきである。

 

これを本件についてみると,前記事実関係によれば,

上告人は,被上告人の職員から上告人に対する税務調査において

適法に帳簿書類の提示を求められ,これに応じ難いとする理由も

格別なかったにもかかわらず,

帳簿書類の提示を拒み続けたということができる。

 

そうすると,上告人は,上記調査が行われた時点で所定の

帳簿書類を保管していたとしても,

法人税法153条に基づく税務職員による帳簿書類の検査に当たって

適時にこれを提示することが可能なように態勢を整えて

保存することをしていなかったというべきであり,

本件は同法127条1項1号に該当する事実がある場合に当たるから,

被上告人が上告人に対してした本件青色取消処分に

違法はないというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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