消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約と消費者契約法10条

(平成23年7月12日最高裁)

事件番号  平成22(受)676

 

この裁判は、

消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された

いわゆる敷引特約が消費者契約法10条により

無効ということはできないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

本件特約は,本件保証金のうち一定額(いわゆる敷引金)を控除し,

これを賃貸借契約終了時に賃貸人が

取得する旨のいわゆる敷引特約である。

 

賃貸借契約においては,本件特約のように,賃料のほかに,

賃借人が賃貸人に権利金,礼金等様々な

一時金を支払う旨の特約がされることが多いが,

賃貸人は,通常,賃料のほか種々の名目で授受される金員を含め,

これらを総合的に考慮して契約条件を定め,また,

賃借人も,賃料のほかに賃借人が支払うべき一時金の額や,

その全部ないし一部が建物の明渡し後も返還されない旨の

契約条件が契約書に明記されていれば,賃貸借契約の締結に当たって,

当該契約によって自らが負うこととなる金銭的な負担を明確に認識した上,

複数の賃貸物件の契約条件を比較検討して,自らにとってより

有利な物件を選択することができるものと考えられる。

 

そうすると,賃貸人が契約条件の一つとしていわゆる敷引特約を定め,

賃借人がこれを明確に認識した上で賃貸借契約の締結に至ったのであれば,

それは賃貸人,賃借人双方の経済的合理性を有する行為と評価すべきものであるから,

消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は,

敷引金の額が賃料の額等に照らし高額に過ぎるなどの事情があれば格別,

そうでない限り,これが信義則に反して消費者である賃借人の利益を

一方的に害するものということはできない

(最高裁平成21年(受)第1679号同23年3月24日

第一小法廷判決・民集65巻2号登載予定参照)。

 

これを本件についてみると,

前記事実関係によれば,本件契約書には,

1か月の賃料の額のほかに,被上告人が

本件保証金100万円を契約締結時に支払う義務を負うこと,

そのうち本件敷引金60万円は本件建物の明渡し後も

被上告人に返還されないことが明確に

読み取れる条項が置かれていたのであるから,

被上告人は,本件契約によって自らが負うこととなる金銭的な負担を

明確に認識した上で本件契約の締結に及んだものというべきである。

 

そして,本件契約における賃料は,契約当初は

月額17万5000円,更新後は17万円であって,

本件敷引金の額はその3.5倍程度にとどまっており,

高額に過ぎるとはいい難く,本件敷引金の額が,

近傍同種の建物に係る賃貸借契約に付された

敷引特約における敷引金の相場に比して,

大幅に高額であることもうかがわれない。

 

以上の事情を総合考慮すると,本件特約は,

信義則に反して被上告人の利益を一方的に害するものということはできず,

消費者契約法10条により無効であるということはできない

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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