清算の結了した株式会社の利害関係人が帳簿及び重要な資料の閲覧又は謄写の請求

(平成16年10月4日最高裁)

事件番号  平成14(受)1289

 

最高裁判所の見解

商法429条は,その前段において,解散した株式会社の

帳簿・重要資料を清算結了の登記をした後10年間保存することを要する旨を定め,

その後段において,その保存者は,清算人

その他の利害関係人の請求により裁判所が選任する旨を定めている。

 

帳簿・重要資料には,商法上作成が

義務付けられている会計帳簿等はもとより,

確定申告書の控え,株主総会議事録,取締役会議事録,

更には,営業,清算に関し授受をした信書又はその控え等に至るまで,

営業及び清算に関する重要資料全般が含まれるが,

同条は,当該株式会社の清算に関して後日紛争が生じた場合等に備え,

これらの資料を一定期間証拠資料として

保存する義務を保存者に課したものと解される。

 

商法は,帳簿・重要資料に含まれる株式会社の会計帳簿等については,

一定期間の保存義務を課すとともに(36条),

総株主の議決権の100分の3以上を有する株主に限り,

理由を付した書面により閲覧又は

謄写の請求をすることができるものとし(293条ノ6),

当該株式会社が,この請求を拒否し得る場合についても

明確に定めている(293条ノ7)。

 

また,株主総会議事録,取締役会議事録についても,

その閲覧又は謄写の請求については,備置き義務を定めた規定とは別に,

請求者の範囲,その要件等を定めた規定が置かれている

(244条6項において準用する263条3項,260条ノ4第6項)。

 

そして,当該株式会社が解散した後においても,

同法430条2項の規定により,上記各規定が清算人に準用され,

清算中における会計帳簿等の閲覧又は謄写の請求について,

解散前と同様の制約が定められている。

 

上記のとおり,商法は,帳簿・重要資料に含まれる

上記資料の閲覧又は謄写の請求については,

当該株式会社の解散の前後を問わず,

保存義務や備置き義務を定めた規定とは別に,

対象となる資料の種類に応じて,請求者の範囲,

その要件等を定めた規定を置いている。

 

ところが,清算結了後の帳簿・重要資料の保存義務を定めた

同法429条の規定は,前記のとおり,

上記保存義務と保存者の選任について規定しているだけで,

その閲覧又は謄写の請求について規定するところがなく,

また,同法430条2項のような準用規定もない。

 

このことと,上記の帳簿・重要資料には,会計帳簿等はもとより,

営業及び清算に関する重要資料全般が含まれ,

これらの資料の中には,当該株式会社又は第三者の

営業秘密等の清算結了後においても秘匿することを要する情報が

記載された資料が存在し得ること等にかんがみると,

商法は,清算結了後の株式会社の帳簿・重要資料についての

閲覧又は謄写の請求については,

これを認めていないものと解するのが相当である。

 

したがって,清算の結了した株式会社の利害関係人は,

商法429条の規定に基づき,同条後段所定の保存者に対し,

帳簿・重要資料の閲覧又は謄写の請求を

することはできないものというべきである。

 

以上と異なる見解に立って,被上告人の上告人に対する

商法429条の規定に基づく本件保管帳簿等の閲覧及び

謄写の請求を認容した原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨は理由があり,原判決のうち上告人敗訴部分は破棄を免れない。

 

また,仮に,訴外会社の代表取締役であったEと

被上告人との間で帳簿等の閲覧謄写についての

被上告人主張の合意があったとしても,

同条の規定により選任された保存者である上告人が,

これに拘束されると解すべき根拠はないから,

上記合意に基づく閲覧及び謄写の請求も,

理由がないことは明らかである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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