漁業協同組合が漁業法8条2項に規定する事項について総会決議により漁業権行使規則の定めと異なった規律を行うことの許否

(平成9年7月1日最高裁)

事件番号  平成5(オ)278

 

最高裁判所の見解

漁業法によれば、共同漁業権は、

同法一四条八項に規定する適格性を有する漁業協同組合又は

漁業協同組合連合会(以下「漁業協同組合等」という。)に対する

都道府県知事の免許によってのみ設定されるものであり

(同法一〇条、一三条一項一号)、

漁業協同組合の組合員(漁業者又は漁業従事者であるものに限る。)であって

当該漁業協同組合等がその有する共同漁業権ごとに

制定する漁業権行使規則で規定する資格に該当する者のみが

当該漁業協同組合等の有する当該共同漁業権の範囲内において

漁業を営む権利を有し(同法八条一項)、

漁業権行使規則には、

漁業を営む権利を有する者の資格に関する事項のほか、

当該漁業権の内容である漁業につき、

漁業を営むべき区域及び期間、漁業の方法

その他当該漁業を営む権利を有する者が

当該漁業を営む場合において遵守すべき事項を

定める旨規定されている(同条二項)。

 

また、同法及び水産業協同組合法によれば、

漁業権行使規則の制定、変更及び廃止のためには、

総組合員(准組合員を除く。)の半数以上が出席し、

その議決権の三分の二以上の多数による議決を要すること

(水産業協同組合法五〇条五号)に加えて、

都道府県知事の認可を受けなければ

その効力を生じないものとされている(漁業法八条四項、五項)。

 

このように、漁業法が同法八条二項に規定する事項についての

規律は専ら漁業権行使規則の規定によるものとした上で

都道府県知事の認可を同規則の制定、変更及び

廃止の効力要件として規定しているのは、

共同漁業権も漁業権の一種として水面の漁業上の

総合利用を図り漁業生産力を維持発展させるという

公益的見地から都道府県知事の免許によって

設定されるものであることにかんがみ、

同規則の制定、変更及び廃止をすべて漁業協同組合等の

自治的手続にゆだねてしまうのは相当でないとして、

公益的見地から都道府県知事に

審査権限を付与する趣旨のものであると解される。

 

右に述べた共同漁業権についての法制度にかんがみると、

漁業協同組合が、その有する共同漁業権の内容である

漁業を営む権利を有する者の資格に関する事項

その他の漁業法八条二項に規定する事項について、

総会決議により漁業権行使規則の定めと異なった規律を行うことは、

たとえ当該決議が水産業協同組合法五〇条五号に規定する

特別決議の要件を満たすものであったとしても、

許されないものと解するのが相当である。

 

四 これを本件についてみるのに、前記事実関係によれば、

本件漁業権行使規則は、五名の管理委員により構成される

漁業権管理委員会が漁業を行う者及び当該漁業を行う者の

行使区域、行使期間その他行使の内容たるべき事項を定める旨

規定しており、右事項についての総会の権限を定めた規定は

置かれていないというのであるから、

前記一3の総会決議が右決定の最終的権限を総会に

留保する旨を定めたものであるとしても、

同規則は、本件漁業権の内容である漁業を営む権利を有する者の

決定を専ら同規則に基づいて組織される漁業権管理委員会の権限として

規定したものと解さざるを得ず、右決議は、

同規則と抵触する限度において、

その効力を有しないものというべきである。

 

しかるところ、前記事実関係によれば、漁業権管理委員会は

本件漁業権の内容である漁業を営む権利を有する者を

上告人に決定したというのであるから、

右決定につき総会の承認決議を経ていないとしても、

上告人は本件漁業権の内容である漁業を営む権利を

有するものといわなければならない。

 

そして、本件漁業権行使禁止決議は、

上告人が本件漁業権の内容である漁業を営む権利を有しないことを

専らその理由とするものであるから、右決議は、その前提を欠き、

無効と解するほかはない。

 

また、本件除名決議も、上告人が本件漁業権の内容である

漁業を営む権利を有しないにもかかわらず右漁業を営み、

本件漁業権行使禁止決議及びこれを受けた被上告人の

勧告、請求に従わなかったことが被上告人の

定款の定める除名事由に該当することを理由とするものであるから、

右決議は、除名事由に該当する事実がないにもかかわらず

これがあるものとしてされたもので、

その要件を欠き、無効というべきである。

 

右と異なる原審の判断は、法令の解釈適用を誤った違法があり、

右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、

論旨は理由があり、原判決は、その余の点について

判断するまでもなく、破棄を免れない。

 

そして、以上によれば、上告人の請求を

いずれも棄却した第一審判決を取り消して、

右請求をいずれも認容すべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク