火災保険契約の火災発生の偶然性についての主張立証責任

(平成16年12月13日最高裁)

事件番号  平成16(受)988

 

最高裁判所の見解

商法は,火災によって生じた損害はその火災の原因いかんを問わず保険者が

てん補する責任を負い,保険契約者又は被保険者の

悪意又は重大な過失によって生じた損害は保険者が

てん補責任を負わない旨を定めており(商法665条,641条),

火災発生の偶然性いかんを問わず火災の発生によって

損害が生じたことを火災保険金請求権の成立要件とするとともに,

保険契約者又は被保険者の故意又は重大な過失によって

損害が生じたことを免責事由としたものと解される。

 

火災保険契約は,火災によって被保険者の被る損害が甚大なものとなり,

時に生活の基盤すら失われることがあるため,

速やかに損害がてん補される必要があることから締結されるものである。

 

さらに,一般に,火災によって保険の目的とされた財産を失った被保険者が

火災の原因を証明することは困難でもある。

 

商法は,これらの点にかんがみて,保険金の請求者(被保険者)が

火災の発生によって損害を被ったことさえ立証すれば,

火災発生が偶然のものであることを立証しなくても,

保険金の支払を受けられることとする趣旨のものと解される。

 

このような法の趣旨及び前記1(2)記載の本件約款の規定に照らせば,

本件約款は,火災の発生により損害が生じたことを

火災保険金請求権の成立要件とし,同損害が保険契約者,被保険者又は

これらの者の法定代理人の故意又は重大な過失によるもので

あることを免責事由としたものと解するのが相当である。

 

したがって,本件約款に基づき保険者に対して火災保険金の支払を請求する者は,

火災発生が偶然のものであることを主張,

立証すべき責任を負わないものと解すべきである。

 

これと結論において同旨をいう原審の判断は正当である。

所論引用の最高裁平成10年(オ)第897号

同13年4月20日第二小法廷判決・

民集55巻3号682頁,最高裁平成12年(受)第458号

同13年4月20日第二小法廷判決・

裁判集民事202号161頁は,

いずれも本件と事案を異にし,本件に適切でない。

論旨は採用することができない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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