熊本市職員特殊勤務手当支給条例(昭和28年熊本市条例第22号)6条の趣旨

(平成7年4月17日最高裁)

事件番号  平成5(行ツ)86

 

最高裁判所の見解

1 特殊勤務手当は、著しく危険、不快、不健康又は

困難な勤務その他著しく特殊な勤務であって、

給与上特別の考慮を必要とし、かつ、

その特殊性を給料で考慮することが適当でないと

認められる勤務に従事した職員に対して支給すべき手当で

あると解されるところ、普通地方公共団体は、

その職員に対し、いかなる給与その他の給付も法律又は

これに基づく条例に基づかずには支給することができず

(地方自治法二〇四条の二、地方公務員法二五条一項)、

給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、

条例で定めなければならないのであって

(地方自治法二〇四条三項)、この理は、

特殊勤務手当の支給についても異なるところはない。

 

そうすると、どのような勤務を対象として

特殊勤務手当を支給するのかは、条例において

規定すべきものであって、

この判断を広く普通地方公共団体の長の裁量にゆだねることは、

地方自治法及び地方公務員法の右各規定の

許容しないところといわなければならない。

 

しかしながら、普通地方公共団体においては、

臨時に、著しく危険、不快、不健康又は

困難な勤務その他著しく特殊な勤務に従事することを

職員に命ずることがあるが、特殊勤務手当の

支給の対象とされている他の勤務との対比において、

この勤務を特殊勤務手当の支給の対象と

しないことが不合理であると考えられるのに、

条例では、その対象とされていない結果、

特殊勤務手当の支給に関し均衡を失する

事態を生ずることも考えられないではない。

 

本件条例六条の規定は、このような場合には、

特別の考慮を要するものとして、

臨時に従事させた勤務について、市長の判断によって、

応急的に、同条例別表記載の手当の額に準ずる額を決定して、

特殊勤務手当を支給することを可能にしたものと解される。

 

したがって、本件条例六条は、職員を臨時に従事させた勤務について

特殊勤務手当を支給しないことが、

同条例別表に掲げられた特殊勤務手当の支給の対象となる勤務との

対比において不合理であると認められるような場合に、

市長が、応急的措置として、特殊勤務手当を

支給することを許容したものと解するのが相当であって、

その限りにおいて、地方自治法及び

地方公務員法の前記各規定に抵触しないものということができる。

 

2 これを本件についてみると、前記事実関係によれば、

熊本市においては、昼休み窓口業務は、

昭和五七年九月六日以降、継続的、恒常的に行われており、

職員を昼休み窓口業務に臨時に従事させたとみる余地はないし、

これに対する本件手当の支給も継続的に行われてきたことが明らかである。

 

そうすると、本件手当が、職員を臨時に従事させた職務につき、

応急的に支給されたものとは認め難い。

 

市長が、毎年度ごとに、その支給を

決定していたという事情があるとしても、

この点の評価が変わるものではない。

 

しかも、昼休み窓口業務は、休憩時間が

一時間繰り下がるものの、その勤務内容や勤務条件からすれば、

本件条例別表に掲げられた一三種類の特殊勤務手当の

支給の対象となる勤務との対比において、

特殊勤務手当の支給の対象としないことが

不合理であると認められるような勤務に当たるということもできない。

 

したがって、本件支出は、本件条例六条によって

市長に許容された範囲を超えて行われたものであって、

条例に基づかない違法な支出であるというほかはない。

 

3 以上に検討したところによれば、被上告人は、

本件条例六条に基づき、市長の裁量的判断により、

昼休み窓口業務に従事した者に対して本件手当を

支給することができるという誤った条例の解釈に基づき、

本件支出を行ったものといわざるを得ないが、

前記の地方自治法及び地方公務員法の規定があることに加え、

本件条例六条が同二条及び別表を補充するものとして

置かれていることや同六条が臨時的、応急的な

措置を定めるものであることは同条の文理から

十分に読み取れることを考慮するならば、

被上告人の右の解釈に相当な根拠があるものとみることはできない。

 

しかも、前記事実関係によれば、

熊本市が前記調査の対象とした地方公共団体のうち、

昼休み窓口業務に従事した職員に対して特殊勤務手当を

支給していた地方公共団体には、

昼休み窓口業務を特殊勤務手当の

支給の対象とする旨の条例の定めがあったというのであるから、

その点についての調査を行っていたならば、

本件条例六条に基づいて本件手当の

支給を続けることに疑義のあることは容易に知り得たものというべきである。

 

そうすると、被上告人は、市長として尽くすべき注意義務を怠り、

誤った条例の解釈に基づいて漫然と本件手当の支給を継続したものであり、

被上告人は、その過失により、

違法な本件支出をしたものと評価せざるを得ない。

 

四 以上によれば、上告人の請求を棄却した原審の判断は、

法令の解釈適用を誤ったものというべきであり、

その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、

この点をいう論旨は理由があり、

その余の論旨について判断するまでもなく、

原判決は破棄を免れない。

 

そして、前示説示によれば、上告人の請求を認容した

第一審判決は正当であるから、

被上告人の控訴を棄却すべきである。

 

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