特許法(平成5年法律26号による改正前のもの)123条

(平成11年3月9日最高裁)

事件番号  平成7(行ツ)204

 

最高裁判所の見解

審決取消訴訟において、

審判の手続において審理判断されなかった

公知事実との対比における無効原因は審決を違法とし、

又はこれを適法とする理由として主張することができないことは、

当審の判例とするところである

(最高裁昭和四二年(行ツ)第二八号同五一年三月一〇日大法廷判決・

民集三〇巻二号七九頁)。明細書の特許請求の範囲が訂正審決により

減縮された場合には、減縮後の特許請求の範囲に新たな要件が

付加されているから、通常の場合、訂正前の明細書に基づく発明について

対比された公知事実のみならず、その他の公知事実との対比を行わなければ、

右発明が特許を受けることができるかどうかの判断をすることができない。

 

そして、このような審理判断を、

特許庁における審判の手続を経ることなく、

審決取消訴訟の係属する裁判所において

第一次的に行うことはできないと解すべきであるから、

訂正後の明細書に基づく発明が特許を受けることができるかどうかは、

当該特許権についてされた無効審決を取り消した上、

改めてまず特許庁における審判の手続によってこれを審理判断すべきものである。

 

もっとも、訂正後の明細書に基づく発明が

無効審決において対比されたのと同一の公知事実により

無効とされるべき場合があり得ないではなく、

原判決は本件がこのような場合であることを理由とするものであるが、

本件において訂正審決がされるためには、

平成五年法律第二六号による改正前の特許法(以下「旧法」という。)一二六条三項により、

訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により

構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることが

できるものでなければならないから、

訂正後の明細書に基づく発明が無効審決において

対比された公知事実により同様に無効とされるべきであるならば、

訂正審決は右規定に反していることとなり、

そのような場合には、旧法は、訂正の無効の審判(一二九条)により

訂正を無効とし、当該特許権について

既にされた無効審決についてはその効力を維持することを

予定しているということができる

(現行法においては、一二三条一項八号において、

一二六条四項に違反して訂正審決がされたことが

特許の無効原因となる旨を規定するから、右のような場合には、

これを理由として改めて特許の無効の審判により

これを無効とすることが予定されている。)。

 

したがって、無効審決の取消しを求める

訴訟の係属中に当該特許権について

特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正審決が確定した場合には

当該無効審决を取り消さなければならないものと解するのが相当である。

 

これを本件について見ると、

本件訂正審決による本件明細書の特許請求の範囲の前記訂正のうち

「一枚板鋼板」を「一枚厚肉鋼板」に訂正する点は

特許請求の範囲の減縮に当たるものであるから、

本件無効審決はこれを取り消すべきものである。

 

以上のとおりであるから、

これと異なる判断の下に本件請求を棄却した原判決には、

法令の解釈を誤った違法があり、

その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨は理由があり、その余の上告理由につき判断するまでもなく、

原判決は破棄を免れない。

そして、原審の確定した事実によれば、

本件の審決取消請求はこれを認容すべきものである。

 

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