独占禁止法19条

( 平成10年12月18日最高裁)

事件番号  平成9(オ)2156

 

最高裁判所の見解

1 独占禁止法一九条は、

「事業者は、不公正な取引方法を用いてはならない。」

と定めているところ、同法二条九項四号は、

不公正な取引方法に当たる行為の一つとして、

相手方の事業活動を不当に拘束する条件をもって取引する行為であって、

公正な競争を阻害するおそれのあるもののうち、

公正取引委員会が指定するものを掲げ、一般指定の13により、

「相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の

事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること。」

(拘束条件付取引)が指定されている。

このように拘束条件付取引が規制されるのは、

相手方の事業活動を拘束する条件を付けて取引すること、

とりわけ事業者が自己の取引とは

直接関係のない相手方と第三者との取引について、

競争に直接影響を及ぼすような拘束を加えることは、

相手方が良質廉価な商品・役務を提供するという形で

行われるべき競争を人為的に妨げる側面を有しているからである。

しかし、拘束条件付取引の内容は様々であるから、

その形態や拘束の程度等に応じて公正な競争を

阻害するおそれを判断し、それが公正な競争秩序に

悪影響を及ぼすおそれがあると認められる場合に、

初めて相手方の事業活動を「不当に」拘束する条件を

付けた取引に当たるものというべきである。

 

そして、メーカーや卸売業者が販売政策や販売方法について

有する選択の自由は原則として尊重されるべきであることにかんがみると、

これらの者が、小売業者に対して、商品の販売に当たり顧客に商品の説明を

することを義務付けたり、商品の品質管理の方法や陳列方法を

指示したりするなどの形態によって販売方法に関する制限を課することは、

それが当該商品の販売のためのそれなりの

合理的な理由に基づくものと認められ、かつ、

他の取引先に対しても同等の制限が課せられている限り、

それ自体としては公正な競争秩序に悪影響を及ぼすおそれはなく、

一般指定の13にいう相手方の事業活動を「不当に」拘束する条件を

付けた取引に当たるものではないと解するのが相当である。

 

これを本件についてみると、本件特約店契約において、

特約店に義務付けられたカウンセリング販売は、

化粧品の説明を行ったり、その選択や使用方法について

顧客の相談に応ずる(少なくとも常に顧客の求めにより

説明・相談に応じ得る態勢を整えておく)という

付加価値を付けて化粧品を販売する方法であって、

被上告人が右販売方法を採る理由は、これによって、

最適な条件で化粧品を使用して美容効果を高めたいとの

顧客の要求に応え、あるいは肌荒れ等の

皮膚のトラブルを防ぐ配慮をすることによって、

顧客に満足感を与え、他の商品とは区別された

D化粧品に対する顧客の信頼(いわゆるブランドイメージ)を

保持しようとするところにあると解されるところ、

化粧品という商品の特性にかんがみれば、顧客の信頼を保持することが

化粧品市場における競争力に影響することは自明のことであるから、

被上告人がカウンセリング販売という販売方法を採ることには

それなりの合理性があると考えられる。

 

そして、被上告人は、他の取引先との間においても

本件特約店契約と同一の約定を結んでおり、

実際にも相当多数のD化粧品がカウンセリング販売により

販売されていることからすれば、上告人に対して

これを義務付けることは、一般指定の13にいう

相手方の事業活動を「不当に」拘束する条件を

付けた取引に当たるものということはできないと解される。

 

2 次に、独占禁止法二条九項四号に基づく

公正取引委員会の一般指定の12の一は、正当な理由がないのに、

「相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めて

これを維持させることその他相手方の

当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。」

(再販売価格の拘束)を禁じているところ、

販売方法の制限を手段として再販売価格の

拘束を行っていると認められる場合には、

そのような販売方法は右の見地から

独占禁止法上問題となり得ると解される。

 

これを本件についてみると、販売方法に関する制限を課した場合、

販売経費の増大を招くことなどから多かれ少なかれ

小売価格が安定する効果が生ずるが、

右のような効果が生ずるというだけで、

直ちに販売価格の自由な決定を拘束していると

いうことはできないと解すべきであるところ、

被上告人がカウンセリング販売を手段として

再販売価格の拘束を行っているとは認められないとした原審の認定判断は、

原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができる。

 

以上のとおり、カウンセリング販売を義務付けることは、

一般指定の13(拘束条件付取引)及び12(再販売価格の拘束)に

当たるものということはできない。

 

3 被上告人と特約店契約を締結しておらず

カウンセリング販売の義務を負わない

小売店等に商品が売却されてしまうと、

特約店契約を締結して販売方法を制限し、

D化粧品に対する顧客の信頼(いわゆるブランドイメージ)を

保持しようとした本件特約店契約の目的を達することができなくなるから、

被上告人と特約店契約を締結していない小売店等に対する卸売販売の禁止は、

カウンセリング販売の義務に必然的に伴う義務というべきであって、

カウンセリング販売を義務付けた約定が独占禁止法一九条に違反しない場合には、

右卸売販売の禁止も、同様に同条に違反しないと解すべきである。

 

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