生命保険の死亡保険金請求権の消滅時効の起算点とする旨を定めている保険約款の解釈

(平成15年12月11日最高裁)

事件番号  平成12(受)485

 

最高裁判所の見解

本件消滅時効にも適用される民法166条1項が,

消滅時効の起算点を

「権利ヲ行使スルコトヲ得ル時」と定めており,

単にその権利の行使について法律上の障害がないというだけではなく,

さらに権利の性質上,その権利行使が現実に期待することが

できるようになった時から消滅時効が進行するというのが

同項の規定の趣旨であること

(最高裁昭和40年(行ツ)第100号同45年7月15日大法廷判決・

民集24巻7号771頁参照)にかんがみると,

本件約款が本件消滅時効の起算点について上記のように定めているのは,

本件各保険契約に基づく保険金請求権は,

支払事由(被保険者の死亡)が発生すれば,通常,

その時からの権利行使が期待できると解されることによるものであって,

当時の客観的状況等に照らし,その時からの権利行使が

現実に期待できないような特段の事情の存する場合についてまでも,

上記支払事由発生の時をもって

本件消滅時効の起算点とする趣旨ではないと解するのが相当である。

 

そして,本件約款は,このような特段の事情の存する場合には,

その権利行使が現実に期待することができるようになった時以降において

消滅時効が進行する趣旨と解すべきである。

 

上記の見解に立って本件をみるに,前記の事実関係によれば,

乙は,平成4年5月17日に自動車を運転して自宅を出たまま帰宅せず,

被上告人は,同月19日に地元の警察署に捜索願を提出したものの,

その行方,消息については,何の手掛かりもなく,

その生死も不明であったが,乙が行方不明となってから

3年以上が経過した平成8年1月7日,

静岡県裾野市のaラインb峠展望台広場から直線距離で

約120m下方の雑木林の中で,乙が運転していた自動車と共に

白骨化した遺体となって発見されたこと,

その死亡時期は,乙が行方不明となった平成4年5月ころと

推認されること等が明らかである。

 

上記の事実によれば,被上告人の本件各保険契約に基づく

保険金請求権については,本件約款所定の支払事由(乙の死亡)が

発生した時から乙の遺体が発見されるまでの間は,

当時の客観的な状況等に照らし,その権利行使が現実に

期待できないような特段の事情が存したものというべきであり,

その間は,消滅時効は進行しないものと解すべきである。

 

そうすると,本件消滅時効については,乙の死亡が確認され,

その権利行使が現実に期待できるようになった

平成8年1月7日以降において

消滅時効が進行するものと解されるから,

被上告人が本件訴訟を提起した同年11月7日までに

本件消滅時効の期間が経過していないことは明らかである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク