生活保護法が不法残留者を保護の対象としていないことと憲法25条,14条1項

(平成13年9月25日最高裁)

事件番号  平成9(行ツ)176

 

最高裁判所の見解

本件は,本邦に在留する外国人で,在留期間の更新又は

変更を受けないで在留期間を経過して

本邦に残留する者(以下「不法残留者」という。)である上告人が,

交通事故に遭遇して傷害を負い,生活保護法による保護の開始を申請したが,

被上告人により却下処分を受けたので,その取消しを請求する事案である。

 

論旨は,憲法25条が,不法残留者を含む在留外国人に対しても

緊急医療を受ける権利を直接保障しており,

生活保護法は少なくともその限度で在留外国人を

保護の対象としていると解すべきであるのに,

原判決がこれを否定したのは,憲法25条,14条1項及び

生活保護法の解釈適用を誤ったものである,というにある。

 

しかしながら,生活保護法が不法残留者を

保護の対象とするものではないことは,

その規定及び趣旨に照らし明らかというべきである。

 

そして,憲法25条については,同条1項は国が個々の国民に対して

具体的,現実的に義務を有することを規定したものではなく,

同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及び

社会的施設の創造拡充により個々の

国民の具体的,現実的な生活権が設定充実されていくものであって,

同条の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの

選択決定は立法府の広い裁量にゆだねられていると解すべきところ,

不法残留者を保護の対象に含めるかどうかが

立法府の裁量の範囲に属することは明らかというべきである。

 

不法残留者が緊急に治療を要する場合についても,

この理が当てはまるのであって,立法府は,

医師法19条1項の規定があること等を考慮して

生活保護法上の保護の対象とするかどうかの

判断をすることができるものというべきである。

 

したがって,同法が不法残留者を保護の対象としていないことは,

憲法25条に違反しないと解するのが相当である。

 

また,生活保護法が不法残留者を保護の対象としないことは

何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いには当たらないから,

憲法14条1項に違反しないというべきである。

 

以上は,当裁判所大法廷判決

(最高裁昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日判決・

民集36巻7号1235頁,最高裁昭和50年(行ツ)第120号

同53年10月4日大法廷判決・民集32巻7号1223頁,

最高裁昭和37年(あ)第927号同39年11月18日大法廷判決・

刑集18巻9号579頁,最高裁昭和37年(オ)第1472号

同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁)

の趣旨に徴して明らかである。

 

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