生活保護法1条,生活保護法4条1項

(平成16年3月16日最高裁)

事件番号  平成11(行ツ)38

 

最高裁判所の見解

生活保護法による保護は,生活に困窮する者が,

その利用し得る資産,能力その他あらゆるものを,

その最低限度の生活の維持のために活用することを要件とし,

その者の金銭又は物品で満たすことのできない

不足分を補う程度において行われるものであり,

最低限度の生活の需要を満たすのに十分であって,かつ,

これを超えないものでなければならない(同法4条1項,8条)。

 

また,保護の種類は,生活扶助,教育扶助,住宅扶助,医療扶助,

出産扶助,生業扶助及び葬祭扶助の7種類と

定められており(同法11条1項),

各類型ごとに保護の行われる範囲が定められている。

 

そうすると,保護金品又は被保護者の

金銭若しくは物品を貯蓄等に充てることは

本来同法の予定するところではないというべきである。

 

しかし,保護は,厚生大臣の定める基準により

要保護者の需要を測定し,これを基として行われる(同法8条1項)のであり,

生活扶助は,原則として金銭給付により(同法31条1項),

1月分以内を限度として前渡しの方法により行われ(同条2項),

居宅において生活扶助を行う場合の保護金品は,

世帯単位に計算し,世帯主又はこれに準ずる者に対して

交付するものとされている(同条3項)。

 

このようにして給付される保護金品並びに被保護者の

金銭及び物品(以下「保護金品等」という。)を

要保護者の需要に完全に合致させることは,

事柄の性質上困難であり,同法は,世帯主等に当該世帯の家計の

合理的な運営をゆだねているものと解するのが相当である。

 

そうすると,被保護者が保護金品等によって生活していく中で,

支出の節約の努力(同法60条参照)等によって

貯蓄等に回すことの可能な金員が生ずることも考えられないではなく,

同法も,保護金品等を一定の期間内に使い切ることまでは

要求していないものというべきである。

 

同法4条1項,8条1項の各規定も,要保護者の保有するすべての

資産等を最低限度の生活のために使い切った上でなければ

保護が許されないとするものではない。

 

このように考えると,生活保護法の趣旨目的にかなった目的と

態様で保護金品等を原資としてされた貯蓄等は,

収入認定の対象とすべき資産には当たらないというべきである。

 

生活保護法上,被保護世帯の子弟の義務教育に伴う費用は,

教育扶助として保護の対象とされているが(同法11条1項2号,13条),

高等学校修学に要する費用は保護の対象とはされていない。

 

しかし,近時においては,ほとんどの者が高等学校に進学する状況であり,

高等学校に進学することが自立のために

有用であるとも考えられるところであって,

生活保護の実務においても,前記のとおり,

世帯内修学を認める運用がされるようになってきているというのであるから,

被保護世帯において,最低限度の生活を維持しつつ,

子弟の高等学校修学のための費用を蓄える努力をすることは,

同法の趣旨目的に反するものではないというべきである。

 

そうすると,甲が同一世帯の構成員である子の

高等学校修学の費用に充てることを目的として

満期保険金50万円の本件学資保険に加入し,給付金等を原資として

保険料月額3000円を支払っていたことは,

生活保護法の趣旨目的にかなったものであるということができるから,

本件返戻金は,それが同法の趣旨目的に反する

使われ方をしたなどの事情がうかがわれない本件においては,

同法4条1項にいう資産等又は同法8条1項にいう金銭等には当たらず,

収入認定すべき資産に当たらないというべきである。

 

したがって,本件返戻金の一部について収入認定をし,

保護の額を減じた本件処分は,同法の解釈適用を誤ったものというべきである。

 

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