発信者情報の開示請求に応じなかった特定電気通信役務提供者が損害賠償責任を負う場合

(平成22年4月13日最高裁)

事件番号  平成21(受)609

 

この裁判では、

特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び

発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づく

発信者情報の開示請求に応じなかった

特定電気通信役務提供者が損害賠償責任を負う場合について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1) 法は,4条1項において,

特定電気通信による情報の流通によって

自己の権利を侵害されたとする者は,

侵害情報の流通によって自己の権利が侵害されたことが

明らかであるなど同項各号所定の要件のいずれにも該当する場合,

当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる

特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し,

その発信者情報(氏名,住所その他の侵害情報の

発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。)の

開示を請求することができる旨を規定する一方で,

同条2項において,開示関係役務提供者が

そのような請求を受けた場合には,

原則として発信者の意見を聴かなければならない旨を,

同条4項本文において,開示関係役務提供者が

上記開示請求に応じないことにより

その開示請求をした者に生じた損害については,

故意又は重過失がある場合でなければ賠償の責任を負わない旨を,

それぞれ規定している。以上のような法の定めの趣旨とするところは,

発信者情報が,発信者のプライバシー,表現の自由,

通信の秘密にかかわる情報であり,正当な理由がない限り第三者に

開示されるべきものではなく,また,

これがいったん開示されると開示前の状態への回復は不可能となることから,

発信者情報の開示請求につき,侵害情報の流通による開示請求者の

権利侵害が明白であることなどの厳格な要件を定めた上で(4条1項),

開示請求を受けた開示関係役務提供者に対し,

上記のような発信者の利益の保護のために,

発信者からの意見聴取を義務付け(同条2項),

開示関係役務提供者において,発信者の意見も踏まえて

その利益が不当に侵害されることがないように十分に意を用い,

当該開示請求が同条1項各号の要件を満たすか否かを

判断させることとしたものである。

 

そして,開示関係役務提供者がこうした法の定めに従い,

発信者情報の開示につき慎重な判断をした

結果開示請求に応じなかったため,

当該開示請求者に損害が生じた場合に,

不法行為に関する一般原則に従って開示関係役務提供者に

損害賠償責任を負わせるのは適切ではないと考えられることから,

同条4項は,その損害賠償責任を制限したのである。

 

そうすると,開示関係役務提供者は,侵害情報の流通による

開示請求者の権利侵害が明白であることなど当該開示請求が

同条1項各号所定の要件のいずれにも該当することを認識し,

又は上記要件のいずれにも該当することが一見明白であり,

その旨認識することができなかったことにつき

重大な過失がある場合にのみ,

損害賠償責任を負うものと解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク