百貨店の代表取締役の任務違反に加功した被告人について特別背任罪の成立が肯定された事例
(平成9年10月28日最高裁)
事件番号 平成6(あ)544
最高裁判所の見解
原判決の認定によれば、株式会社Aの代表取締役Bと、
その愛人であり、株式会社Cの代表取締役であるとともに、
D株式会社の実質的経営者であった被告人は、
共謀の上、Aが海外で買い付け、Dを介して輸入した商品について、
更にCを経由して仕入れる合理的理由がないのに、
これを殊更にDからCに転売させた上で
同社からAが仕入れることにより、
Cに差益を取得させたというのである。
Bは、百貨店の代表取締役として、商品の仕入れに当たり、
仕入原価をできる限り廉価にするなど仕入れに伴う
無用な支出を避けるべき任務を負っていたものと解されるところ、
前記事実によれば、Cの利益を図る目的をもって、
右任務に背いて同社をDとAとの間に介在させて差益を取得させ、
それと同額の損害をAに与えたことが明らかであるから、
Bには商法上の特別背任罪が成立し、
Bと共謀してその犯罪行為に加功した被告人は
同罪の共同正犯としての刑責を免れない。
したがって、これと同旨の原判断は、正当である。
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