破産法24条,破産法26条

(平成14年9月24日最高裁)

事件番号  平成12(受)1584

 

この裁判では、

債務者に対する破産宣告後に物上保証人から

届出債権の一部の弁済を受けた破産債権者が権利を行使し得る範囲

について裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

債務者が破産宣告を受けた場合において,

債権の全額を破産債権として届け出た債権者は,

破産宣告後に物上保証人から届出債権の弁済を得ても,

届出債権全部の満足を得ない限り,

なお届出債権の全額について破産債権者としての

権利を行使することができるものと解するのが相当である。

 

その理由は,次のとおりである。

ア 債権の一部を弁済した物上保証人は,

債務者に対して求償権を取得し,債権者の権利を弁済の割合に応じて

代位行使することができるところ(民法502条),

破産手続においては,債権の全額を届け出ている債権者に対し

その届出債権を弁済した物上保証人は,

全部の履行をする義務を負う者(以下「全部義務者」という。)がした

届出債権の弁済についての規定の準用により,弁済の割合に応じ,

破産債権者の権利を取得することとされている(法26条2項,3項)。

 

イ 弁済による代位は代位弁済者が債務者に対して取得する求償権を

確保するための制度であり,そのために債権者が

不利益を被ることを予定するものではないから,

債権の一部を弁済した物上保証人は,同債権を被担保債権とする

抵当権の実行による競落代金の配当について債権者に劣後する

(最高裁昭和56年(オ)第1175号同60年5月23日

第一小法廷判決・民集39巻4号940頁参照)。

 

ウ 法26条2項にいう

「其ノ弁済ノ割合ニ応シテ債権者ノ権利ヲ取得ス」の意味は,

複数の全部義務者による一部ずつの弁済により,

債権者に届出債権全部を満足させてなお配当金に余剰が生じた場合に,

その余剰部分について,その全部義務者が各自の弁済額の割合に応じて

債権者の権利を取得する旨を定めたものであって,

債権の一部を弁済したにすぎない全部義務者において

直ちに届出債権額に対する弁済額の割合に応じて

債権者の権利を取得する旨を定めたものではない

(最高裁昭和60年(オ)第589号同62年6月2日第三小法廷判決・

民集41巻4号769頁,同昭和60年(オ)第1124号

同62年7月2日第一小法廷判決〔編注:金融法務事情1178号37頁に登載〕,

同平成3年(オ)第491号同7年1月20日第二小法廷判決・

民集49巻1号1頁参照)。

 

そして,物上保証人は,全部義務者と異なり,

担保に供した特定財産の価額の限度において

責任を負うにすぎないが,物上保証人も連帯保証人等の全部義務者も,

債権者が債務者から債権の完全な弁済を受けられない場合に備えて,

有限又は無限の責任を負担するものであって,

責任の集積により債権の効力の強化を図るという点においては

異なるものではないから,

法26条3項において同条2項を準用する場合についても,

上記と別異に解する理由はない。

 

エ また,法24条は,その文言上,

複数の全部義務者に対する各破産手続において,

債権者が各破産宣告時における債権額を

それぞれ行使することを認めたものであるが,

その趣旨は,債務者は債務の履行につき

その一般財産を引当てにして無限責任を負担すべきところ,

有限の破産財団からの平等配当を目的とする破産手続においては

債権全額の弁済が期待できないことから,

全部義務者から債権の一部の弁済を受けても,

全部義務者の責任を集積した目的に照らし,

届出債権全部の満足を得るまでは債権者が破産宣告時における

債権額を行使することを認めたものと解することができる。

 

オ 物上保証人が届出に係る破産債権の一部を弁済することにより

債権者の有する破産債権の額は減少し,物上保証人は,

本来,弁済した価額に応じて債権者と共に

その権利を行使することができるものであるが,

以上のとおりの弁済による代位制度の趣旨,

法26条2項,3項の解釈,物上保証の性質を考え合わせれば,

物上保証人は,届出債権の一部を弁済して求償権を取得しても,

債権者が届出債権全部の満足を受ける前に,

債権者に一部代位して破産財団からの配当により

求償権の満足を受けるいわれはないから,届出債権の

一部を弁済した物上保証人は,法26条3項において

準用する同条2項の規定により,債権者が

届出債権全部の満足を受けた後の配当の余剰部分について

債権者の権利を取得するにすぎず,債権者は,

届出債権全部の満足を受けるまでは,届出債権の全額について

破産債権者としての権利を行使することができるというべきである。

 

また,既に説示した法24条の趣旨に照らしても,

有限の破産財団からの平等配当を目的とする破産手続においては,

届出債権の全額の満足を得るまで債権者が

破産宣告時における債権額を行使し得るとすることは,

物上保証の目的に沿うものというべきである。

 

(2) 以上説示したことは,物上保証人から抵当不動産を取得した者が,

破産宣告時における債権の全額を破産債権として届け出た破産債権者に対し,

その一部を弁済する場合であっても,同様というべきである。

 

(3) これを本件についてみると,前記事実関係によれば,

上告人は,債務者である破産会社の破産宣告時において

本件債権全額を届け出た後に,物上保証に供された

本件不動産を取得した乙から,本件根抵当権を放棄するのと引換えに

350万円の弁済を受けたというのであり,

いまだ届出債権の全額の弁済を得ていないから,

その全額について破産債権者としての権利を行使することができる。

 

被上告人の異議は理由がない。

これと異なる見解に基づき,上告人の本件請求を理由がないとした

原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。

そして,上告人の本件請求は理由があることが明らかであるから,

本件請求を棄却した第1審判決を取り消し,これを認容すべきである。

 

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