破産法72条4号,民法322条,民法333条

(平成9年12月18日最高裁)

事件番号  平成7(オ)863

 

最高裁判所の見解

前記事実関係によれば、被上告人は、本件物件につき

動産売買の先取特権を有していたが、本件物件が

Dに転売されて引き渡されたため、

本件物件に対して先取特権を行使し得なくなったところ、

その後に支払を停止した破産会社は、本件物件を

被上告人に返還する意図の下に、転売契約を合意解除して

本件物件を取り戻した上、

本件代物弁済を行ったものと認められる。

 

ところで、動産売買の先取特権の目的物が買主から

第三取得者に引き渡された後に買主が

その所有権及び占有を回復したことにより、

売主が右目的物に対して再び先取特権を行使し得ることになるとしても、

破産会社が転売契約を合意解除して

本件物件を取り戻した行為は、

被上告人に対する関係では、法的に不可能であった

担保権の行使を可能にするという意味において、

実質的には新たな担保権の設定と同視し得るものと解される。

 

そして、本件代物弁済は、本件物件を被上告人に返還する意図の下に、

転売契約の合意解除による本件物件の取戻しと

一体として行われたものであり、支払停止後に義務なくして設定された

担保権の目的物を被担保債権の

代物弁済に供する行為に等しいというべきである。

 

なお、被上告人は、本件物件が転売されたことにより、

転売代金債権につき先取特権に基づく

物上代位権を取得したものと認められるが、

物上代位権の行使には法律上、事実上の制約があり、

先取特権者が常に他の債権者に優先して物上代位権を

行使し得るものとはいえない上、本件代物弁済の時点では

本件物件の売買代金債権の弁済期は到来しておらず、

被上告人が現実に転売代金債権につき物上代位権を

行使し得る余地はなかったと認められるから、

本件代物弁済が他の破産債権者を害する行為に当たるかどうかの

判断につき右物上代位権の存在が影響を与えるものではない。

 

以上によれば、破産会社の本件代物弁済は、

破産法七二条四号による否認の対象となるものと解するのが相当である。

 

右と異なる原審の前記判断には、法令の解釈適用を誤った違法があり、

右違法が結論に影響を及ぼすことは明らかである。

 

この点をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

そして、本件は、否認権行使に基づき、

本件物件の返還に代えてその価額の償還を求める事案であるところ、

原審は否認権行使の時点における目的物の価額について

認定判断していないため、この点について審理を尽くさせるため、

本件を原審に差し戻すこととする。

 

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