破産者所有の不動産に対する競売手続における交付要求に係る配当金を交付すべき相手方
(平成9年11月28日最高裁)
事件番号 平成7(オ)1937
最高裁判所の見解
破産者所有の不動産を目的とする担保権の実行としての
競売手続において交付要求がされたときは、
交付要求に係る請求権に基づき破産宣告前に国税徴収法又は
国税徴収の例による差押え(参加差押えを含む。以下この項において同じ。)が
されている場合を除き、交付要求に係る配当金は、
破産管財人に交付すべきものと解するのが相当である。
その理由は、次のとおりである。
1 破産法は、総債権者の公平な満足を実現するために、
破産管財人に破産財団の管理、処分の権利を専有させ、
破産管財人を破産手続遂行のための中心的な機関とし、
その広い裁量と責任の下に手続の円滑な進行を期し、もって、
その目的の達成を図っているということができる。
そして、同法においては、国税徴収法又は
国税徴収の例により徴収することのできる請求権(以下「国税等」という。)は、
財団債権とされ(破産法四七条二号)、
国税等に優先する同法四七条三号に規定する
破産管財人の報酬等の共益費用に次いで
(最高裁昭和四〇年(オ)第一四六七号同四五年一〇月三〇日第二小法廷判決・
民集二四巻一一号一六六七頁参照)、
随時弁済を受けることとされている(同法四九条)。
2 破産法七一条一項は、破産財団に属する財産に対し
国税徴収法又は国税徴収の例による滞納処分をした場合においては、
破産宣告はその処分の続行を妨げない旨を規定しているところ、
右規定は、破産宣告前に開始された滞納処分は破産宣告後も
続行することができる旨を特に定める趣旨に出たものであり
(最高裁昭和三九年(行ツ)第四七号同四五年七月一六日第一小法廷判決・
民集二四巻七号八七九頁参照)、
滞納処分を続行して破産手続によらずに
当該滞納処分に係る国税等の弁済を受けることができるとの
趣旨をも含むものと解すべきである。
これに対し、国税徴収法に規定する交付要求は、
同法の規定の上では滞納処分の一種として位置付けられているが、
徴収職員が自ら強制換価手続を行って国税等の徴収を図るものではなく、
既に他の執行機関により開始されている
強制換価手続に参入して国税等の満足を得ようとするものであるから、
徴収職員が自ら手続を進めることを前提とする
破産法七一条一項の滞納処分には当たらないと解される。
3 前記のような破産手続の目的、破産管財人の地位、権限に加え、
破産法が破産手続遂行の特別の例外として
破産宣告前に開始された滞納処分の続行を認めたものの、
交付要求はその例外に当たらないことに徴すれば、
交付要求に係る国税等については、
滞納者が破産宣告を受けた後は、
破産宣告前に自らも滞納処分による差押えをしていた場合を除き、
別除権の行使としての不動産競売手続において、
その売却代金から直接弁済を受けることはできず、
破産法に規定する手続により、破産管財人の合理的判断に基づいて
随時弁済を受けるべきものと解するのが相当である。
右のとおりに解しても、
破産宣告前であれば、国税等については、
滞納処分による差押えをすることによって、
破産法に規定する手続によらないで
弁済を受けることができるのであるから、
国税等の権利者に対し格別の不利益を
課することにはならないというべきである。
所論指摘の点は、いずれも以上の解釈を左右するものではない。
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