確定判決の既判力

( 平成20年7月10日最高裁)

事件番号  平成19(受)1985

 

この裁判は、

前訴において1個の債権の一部についてのみ

判決を求める旨が明示されていたとして,

前訴の確定判決の既判力が当該債権の他の部分を

請求する後訴に及ばないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 上告人らが本件訴訟で行使している本件仮差押執行のために

本件買収金の支払が遅れたことによる遅延損害金相当の

損害(以下「本件遅延金損害」という。)についての賠償請求権と,

上告人らが前事件反訴において行使した本案の起訴命令の申立て及び

前事件本訴の応訴に要した

弁護士費用相当額の損害(以下「本件弁護士費用損害」という。)についての

賠償請求権とは,いずれも本件仮差押命令の申立てが

違法であることを理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権という

1個の債権の一部を構成するものというべきであることは,

原審の判示するとおりである。

 

(2) しかしながら,上告人らは,前事件反訴において,

上記不法行為に基づく損害賠償として本件弁護士費用損害という

費目を特定の上請求していたものであるところ,

記録(前事件の第1審判決)によれば,上告人らは,

このほかに,被上告人が,本件仮差押執行をすれば,

上告人らにおいて長期間にわたって本件樹木を処分することができず,

その間本件買収金を受け取れなくなるし,場合によっては

本件土地が買収予定地から外される可能性もあることを認識しながら,

本件仮差押命令の申立てをしたもので,本件仮差押命令の申立ては,

上告人らによる本件土地の利用と本件買収金の受領を

妨害する不法行為であると主張していたことが明らかである。

 

すなわち,上告人らは,既に前事件反訴において,

違法な本件仮差押命令の申立てによって

本件弁護士費用損害のほかに

本件買収金の受領が妨害されることによる

損害が発生していることをも主張していたものということができる。

そして,本件弁護士費用損害と本件遅延金損害とは,

実質的な発生事由を異にする別種の損害というべきものである上,

前記事実関係によれば,前事件の係属中は本件仮差押命令及び

これに基づく本件仮差押執行が維持されていて,

本件仮差押命令の申立ての違法性の有無が争われていた前事件

それ自体の帰すうのみならず,本件遅延金損害の額も

いまだ確定していなかったことが明らかであるから,

上告人らが,前事件反訴において,

本件遅延金損害の賠償を併せて請求することは

期待し難いものであったというべきである。

 

さらに,前事件反訴が提起された時点において,

被上告人が,上告人らには本件弁護士費用損害以外に

本件遅延金損害が発生していること,

その損害は本件仮差押執行が継続することによって

拡大する可能性があることを認識していたことも,

前記事実関係に照らして明らかである。

 

(3) 以上によれば,前事件反訴においては,

本件仮差押命令の申立ての違法を理由とする損害賠償請求権の

一部である本件弁護士費用損害についての賠償請求権についてのみ

判決を求める旨が明示されていたものと解すべきであり,

本件遅延金損害について賠償を請求する本件訴訟には

前事件の確定判決の既判力は及ばないものというべきである

(最高裁昭和35年(オ)第359号同37年8月10日

第二小法廷判決・民集16巻8号1720頁参照)。

 

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