競業行為が「社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なもの」か

(平成22年3月25日最高裁)

事件番号  平成21(受)1168

 

この裁判は、

金属工作機械部分品の製造等を業とするX会社を

退職後の競業避止義務に関する特約等の定めなく退職した従業員において,

別会社を事業主体として,X会社と同種の事業を営み,

その取引先から継続的に仕事を受注した行為が,

X会社に対する不法行為に当たらないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

前記事実関係等によれば,上告人Y は,

退職のあいさつの際などに本件取引先 1の一部に対して

独立後の受注希望を伝える程度のことはしているものの,

本件取引先の営業担当であったことに基づく

人的関係等を利用することを超えて,

被上告人の営業秘密に係る情報を用いたり,

被上告人の信用をおとしめたりするなどの

不当な方法で営業活動を行ったことは認められない。

 

また,本件取引先のうち3社との取引は

退職から5か月ほど経過した後に始まったものであるし,

退職直後から取引が始まったAについては,

前記のとおり被上告人が営業に消極的な面もあったものであり,

被上告人と本件取引先との自由な取引が本件競業行為によって

阻害されたという事情はうかがわれず,上告人らにおいて,

上告人Y らの退職直後に被上告 1人の営業が弱体化した状況を

殊更利用したともいい難い。さらに,代表取締役就任等の

登記手続の時期が遅くなったことをもって,

隠ぺい工作ということは困難であるばかりでなく,

退職者は競業行為を行うことについて元の勤務先に

開示する義務を当然に負うものではないから,

上告人Y らが本件競業行為を被上告人側に告げなかったからといって,

本件競業行為を違法と評価すべき事由ということはできない。

 

上告人らが,他に不正な手段を講じたとまで

評価し得るような事情があるともうかがわれない。

 

以上の諸事情を総合すれば,本件競業行為は,

社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものということはできず,

被上告人に対する不法行為に当たらないというべきである。

 

なお,前記事実関係等の下では,

上告人らに信義則上の競業避止義務違反があるともいえない。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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