職務専念義務の免除

(平成16年1月15日最高裁)

事件番号  平成13(行ヒ)266

 

最高裁判所の見解

職務専念義務の免除及び勤務しないことについての承認について

明示の要件が定められていない場合であっても,

処分権者がこれを全く自由に行うことができるというものではなく,

職務専念義務の免除が服務の根本基準を定める地方公務員法30条や

職務に専念すべき義務を定める同法35条の趣旨に違反したり,

勤務しないことについての承認が給与の根本基準を定める

同法24条1項の趣旨に違反する場合には,

これらは違法となると解すべきである(前掲第二小法廷判決参照)。

 

そこで,これを本件についてみると,

前記第1の事実関係によれば,

① 本件職員派遣は,第1審被告会社との連絡調整の必要のみでなく,

第1審被告会社が設立されたばかりで事業収入がなく,

十分な人材を確保していないことを考慮して行われたものであった,

② 第1審被告会社は営利を目的とする株式会社であり,

その具体的な事業内容は遊園施設等の経営であった,

③ 本件派遣職員が従事した職務の内容は,

第1審被告会社の組織体制の確立,社員教育,資金調達等,

第1審被告会社の業務全般に及んでいた,

④ 第1審被告会社には,常時2人から6人の職員が派遣され,

派遣人数は延べ13人,派遣期間は約7年間に及んだというのであるから,

第1審被告会社が県の推進するb公園の建設,

運営のために県等が出資して設立された

株式会社であること等を考慮しても,

本件職務専念義務の免除が本件免除規則2条2号所定の要件を

満たすものであるということはできず,本件承認は,

地方公務員法24条1項の趣旨に反する違法なものというべきである。

 

そうすると,本件承認を是正することなく,

これを前提にして行われた本件派遣職員に対する

給与支出は違法というべきであり,

これと同旨の原審の判断は是認することができる。

この点に関する論旨は採用することができない。

 

本件職務専念義務の免除及び本件承認が違法であることは

上記のとおりであるから,本件派遣職員に対する給与等を県において

負担する旨を定めた本件協定は,

地方公務員法24条1項,30条,35条の

趣旨に反する違法なものというべきである。

 

しかしながら,県は,第1審被告会社との間で本件協定を締結し,

これに基づき本件派遣職員に支給すべき給与等を負担したものであるから,

第1審被告会社が県に対して不当利得として

本件派遣職員の給与相当額を返還すべき義務を負うのは,

本件協定が私法上無効である場合に限られるというべきである。

 

地方公務員法24条1項,30条,35条は,

職員の服務義務や給与の基準を定めた規定であるにすぎず,

これらの規定が地方公共団体と私人との間に締結された契約の効力に

直ちに影響を及ぼす強行規定であると解することはできない。

 

また,前記第1の事実関係によれば,

① 本件協定が締結された当時,全国各地の地方公共団体において

第3セクター等への職員派遣が行われていた,

② しかし,地方公務員の派遣に関する法制度は整備されておらず,

職務命令や職務専念義務の免除等の方法が採られていた,

③ 職務専念義務の免除による職員派遣の場合には,

地方公共団体が派遣職員の給与を支出する例が多かった,

④ 上記方法の適否については,定説もなく,

前掲第二小法廷判決において判断基準が示されるまで,

下級審裁判所の判断も分かれていたというのである。

 

このような事情にかんがみれば,本件協定締結当時,

本件協定が公序良俗に違反するものであったということはできず,

本件協定が地方公務員法24条1項,30条,35条の

趣旨に反することが第1審被告会社も知り得るほど明白であって,

これを無効としなければ上記各規定の趣旨を没却する結果となる

特段の事情があるものということもできない。

 

そうすると,本件協定が私法上無効であるということはできず,

第1審被告会社の不当利得返還義務を肯定した原審の判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

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