職員に対する戒告処分は、裁量権を逸脱、濫用したものか

(平成5年3月2日最高裁)

事件番号  平成2(行ツ)118

 

最高裁判所の見解

国家公務員法(以下「国公法」という)九八条二項の規定が

憲法二八条に違反するものでないことは、

当裁判所の判例(最高裁昭和四三年(あ)

第二七八〇号同四八年四月二五日大法廷判決・

刑集二七巻四号五四七頁)とするところであり、

これと同旨の原審の判断は正当である。

論旨は採用することができない。

 

同第二点について
所論引用の経済的、社会的及び文化的権利に関する

国際規約(昭和五四年条約第六号)八条一項(c)、

結社の自由及び団結権の保護に関する条約

(昭和四〇年条約第七号。いわゆるILO八七号条約)三条並びに

団結権及び団体交渉権についての原則の適用に関する条約

(昭和二九年条約第二〇号。いわゆるILO九八号条約)三条は、

いずれも公務員の争議権を保障したものとは解されず、

国公法九八条二項が右各条約に抵触するものとはいえない。

 

右抵触を前提とする所論憲法九八条二項違反の主張は、失当である。

論旨は採用することができない。

 

同第三点及び第五点について

いわゆる出勤簿整理時間の設定は、

一般職に属する国家公務員の勤務時間を短縮し、

出勤簿整理時間中の職務に従事する義務を免除したものと解することはできない

(最高裁昭和五七年(行ツ)第七七号同六〇年一一月八日第二小法廷判決・

民集三九巻七号一三七五頁参照)。

 

したがって、本件職場集会は、勤務時間に食い込むものであり、

業務の正常な運営を阻害するものであるから、

国公法九八条二項の禁止する争議行為に該当するとした原審の判断は、

正当として是認することができ、

原判決に所論の違法はない。

右違法のあることを前提とする所論憲法二八条違反の主張は、失当である。

論旨はいずれも採用することができない。

 

同第四点について

所論引用の最高裁昭和三九年(あ)第二九六号同四一年一〇月二六日大法廷判決

(刑集二〇巻八号九〇一頁)は昭和四四年(あ)

第二五七一号同五二年五月四日大法廷判決(刑集三一巻三号一八二頁)により、また、

所論引用の最高裁昭和四一年(あ)

第四〇一号同四四年四月二日大法廷判決(刑集二三巻五号三〇五頁)は

昭和四四年(あ)第一二七五号同五一年五月二一日大法廷判決

(刑集三〇巻五号一一七八頁)により、それぞれ変更されたものであるのみならず、

所論引用の各大法廷判決は、

地方公務員法等に違反する争議行為につき

一律に刑事制裁を科することの許否を論じたものであり、

それらの行為に関する民事責任、懲戒責任の存否を

判断の対象としたものではない。

 

これと同旨の原審の判断は正当であり、

原判決に所論の判例違反はない。論旨は採用することができない。

 

同第六点について

所論引用の最高裁昭和四七年(行ツ)第五二号同五二年一二月二〇日

第三小法廷判決(民集三一巻七号一一〇一頁)については、

変更の必要は認められない。争議行為としての

本件職場集会の規模、態様、上告人の関与の程度等のほか、

上告人に対する本件懲戒処分が最も軽い戒告にとどまるものであることなど

原審の適法に確定した事実関係の下において、

本件懲戒処分が社会通念上著しく妥当性を欠き、

裁量権を逸脱、濫用したものとはいえないとした原審の判断は正当として

是認することができ、原判決に所論の違法はない。

 

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