自動車代金等請求事件

(平成21年7月17日最高裁)

事件番号  平成19(受)315

 

この裁判では、

自動車の買主が,当該自動車が車台の接合等により

複数の車台番号を有することが判明したとして,

錯誤を理由に売買代金の返還を求めたのに対し,

売主が移転登録手続との同時履行を主張することが

信義則上許されないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

道路運送車両法は,自動車をその車台に

打刻された車台番号によって特定した上,

その自動車の自動車登録ファイルへの登録をするものとしており

(道路運送車両法7条,8条,12条,15条,29条~33条等参照),

1台の自動車につき複数の車台番号が存在したり,

複数の自動車登録がされるということを予定していない。

 

前記事実関係によれば,本件自動車については,

車台の接合等がされたことにより,

その車台に二つの車台番号が打刻されているというのであるから,

そのいずれの車台番号が真正なものであるかを

確定することができない以上,

1台の自動車に複数の車台番号が存在するという

状態(以下「複数車台番号状態」という。)

となっているものであり,少なくともその状態のままでは

新規登録や移転登録をすることは許されないものと解される。

 

したがって,仮に被上告人が本件売買契約に

基づいて移転された登録名義を回復するために,

上告人に対して被上告人の主張するような

移転登録請求権を有するとしても,

上告人が被上告人からの移転登録請求に応じるためには,

本件自動車について移転登録が可能なように

複数車台番号状態を解消する必要があるが,

それが容易に行い得るものであることをうかがわせる資料はなく,

本件自動車の車台の状態等からすると,

上告人から被上告人への移転登録手続は,

仮に可能であるとしても,困難を伴うものといわざるを得ない。

 

そして,前記事実関係によれば,被上告人は,

本来新規登録のできない本件自動車について

本件新規登録を受けた上でこれを自動車オークションに出品し,

上告人は,その自動車オークションにおいて,

被上告人により表示された本件新規登録に係る事項等を信じて,

本件自動車を買い受けたというのであるから,

本件自動車が接合自動車であるために

本件売買契約が錯誤により無効となるという事態も,

登録名義の回復のための上告人から被上告人への

移転登録手続に困難が伴うという事態も,

いずれも被上告人の行為に基因して生じたものというべきである。

 

そうすると,本件自動車が,被上告人が取得した時点で

既に接合自動車であり,被上告人が本件新規登録を申請したことや,

本件自動車を自動車オークションに出品したことについて,

被上告人に責められるべき点がなかったとしても,

本件自動車が接合自動車であることによる

本件売買契約の錯誤無効を原因とする売買代金返還請求について,

複数車台番号状態であるために困難を伴う

本件自動車の移転登録手続との同時履行関係を認めることは,

上告人と被上告人との間の公平を欠くものといわざるを得ない

 

したがって,仮に被上告人が上告人に対し

本件自動車について上告人から

被上告人への移転登録請求権を有するとしても,

上告人からの売買代金返還請求に対し,

同時履行の抗弁を主張して,被上告人が上告人から

本件自動車についての移転登録手続を受けることとの

引換給付を求めることは,信義則上許されないというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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