自動車共済契約の普通共済約款一般条項五条二項に規定する被共済自動車の譲渡の意義

(平成9年9月4日最高裁)

事件番号  平成5(オ)2057

 

最高裁判所の見解

1 被共済自動車を譲渡する旨の合意が成立し、

譲受人に対する右自動車の引渡しがされたことにより、

譲受人が右自動車を使用してこれを現実に支配するに至ったときは、

被共済自動車を加害車両とする交通事故の発生する

危険性の程度がそれまでとは異なることとなるから、

上告組合にとっては、新たに自動車共済契約を締結する際に

被共済者について行うのと同様に、

被共済自動車の譲受人が交通事故を起こす危険性の程度を判断し、

共済契約上の権利義務が譲受人に移転することを承認するかどうか、

承認する場合には共済掛金の額を幾らにするかを

決定し得ることとすることが必要である。

 

本件約款一般条項五条は、上告組合に対しこのような機会を与えるために、

譲渡による共済契約上の権利義務の移転を承認するかどうかの

選択権を与えるとともに、これを承認しない場合における

被共済自動車の譲渡を共済金支払義務の免責事由にすることを

明記したものと解するのが相当である。

 

2 そうすると、本件約款一般条項五条に

規定する譲渡がされたというためには、

被共済自動車を譲渡する旨の合意が成立し、

譲受人に対する被共済自動車の引渡しがされたことにより、

譲受人が右自動車を使用してこれを現実に支配することをもって足り、

被共済自動車の所有権移転時期にはかかわりがなく、

その所有権移転登録手続、売買代金の支払など、

譲渡契約上の義務の履行がすべて完了したかどうかは、

右条項にいう譲渡の有無を左右するものではないと解すべきである。

 

3 これを本件についてみるに、

前記の原審確定事実によれば、本件交通事故当時、

被上告人からFへの本件被共済自動車の所有権移転登録手続がされておらず、

売買代金も完済されていなかったが、

本件売買契約の効力が被上告人に及ぶところ、

右売買契約後にこれに基づく新たな現実の引渡しはないが、

右売買契約当時、本件被共済自動車は、

既にFの支配内に置かれ同人がこれを使用して

現実に支配していたというのであり、

被上告人において、その返還を求めておらず、

Fにおいても当然のこととして使用していたことからすれば、

右売買契約に際し、Fに対する簡易の引渡しがあったというべきであるから、

これにより、被上告人からFに対し、

本件約款一般条項五条に規定する

被共済自動車の譲渡がされたということができ、

上告組合には、本件交通事故につき

被上告人に共済金を支払う義務はないというべきである。

 

四 したがって、これと異なる判断の下に、

本件被共済自動車について本件約款一般条項五条に

規定する被共済自動車の譲渡がされたとはいえないとして

上告組合の本件共済金支払義務を認めた原判決には、

本件約款の解釈を誤った違法があり、

その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

そして、原審の確定した事実によれば、被上告人の請求を棄却した

第一審判決は正当として是認すべきものであって、

被上告人の控訴はこれを棄却すべきものである。

 

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