自動車損害賠償保障法72条1項後段の規定による損害のてん補額支払義務の履行期と履行遅滞

(平成17年6月2日最高裁)

事件番号  平成16(受)29

 

最高裁判所の見解

法72条1項後段の規定により政府が被害者に対して

てん補することとされる損害は,法3条により自己のために

自動車を運行の用に供する者が賠償すべき責めに

任ずることとされる損害をいうのであるから,

法72条1項後段の規定による損害のてん補額は,

被害者の過失をしんしゃくすべきときは,

被害者に生じた現実の損害の額から

過失割合による減額をした残額をいうものと解される。

 

そして,法73条1項は,被害者が,健康保険法,

労働者災害補償保険法その他政令で定める法令に基づいて

法72条1項の規定による損害の

てん補に相当する給付を受けるべき場合には,

政府は,その給付に相当する金額の限度において,

上記損害のてん補をしないと規定し,

自動車損害賠償保障法施行令21条14号は,

法73条1項に規定する政令で定める法令の一つとして

国民健康保険法を挙げているから,

同法58条1項の規定による葬祭費の支給は,

法73条1項に規定する損害のてん補に相当する給付に該当する。

 

したがって,法72条1項後段の規定による損害のてん補額の算定に当たり,

被害者の過失をしんしゃくすべき場合であって,

上記葬祭費の支給額を控除すべきときは,

被害者に生じた現実の損害の額から過失割合による減額をし,

その残額からこれを控除する方法によるのが相当である。

 

そこで,被上告人B1が支出した葬儀費用94万7767円に

過失相殺をしてその5割を減額すると47万3883円となり,

これから上記葬祭費5万円を控除すると42万3883円となる。

 

これに,上記1(1)の172万3665円及び31万2011円の

合計203万5676円並びに同(3)の21万円を加算すると,

被上告人B1に対しててん補すべき残額は266万9559円となる。

 

したがって,被上告人B1の上告人に対する請求は,

266万9559円及びうち63万3883円に対する

平成12年12月1日から,うち172万3665円に対する

平成14年2月2日から各支払済みまで

民法所定の年5分の割合による

遅延損害金の支払を求める限度で理由があり,

その余は棄却すべきである。原審の上記判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,

原判決のうち上記の額を超えて

被上告人B1の請求を認容した部分は破棄を免れない。

 

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