自家用自動車保険普通保険約款の搭乗者傷害条項にいう「正規の乗車用構造装置のある場所」の意義

(平成7年5月30日最高裁)

事件番号  平成3(オ)2041

 

最高裁判所の見解

搭乗者傷害条項にいう「正規の乗車用構造装置のある場所」とは、

乗車用構造装置がその本来の機能を果たし得る状態に

置かれている場所をいうものと解するのが相当である。

 

けだし、右条項にいう「乗車用構造装置」とは、

車両に搭乗中の者が車両の走行による動揺、衝撃等によって

転倒、転落することを防止し、

その安全を確保するための装置をいうものと解すべきところ、

搭乗者傷害条項は、車両に搭乗中の者が、

右装置が本来の機能を果たし得る状態に置かれている場所に

搭乗していたにもかかわらず発生した事故によって

生じた損害を補填することを目的とするものであって、

それ以外の場所、すなわち右装置が本来の機能を果たし得ない状態に

置かれている場所に搭乗中に発生した事故による損害まで

補填しようとするものではないというべきだからである。

 

前記事実関係によれば、本件事故当時Eが乗車していた場所は、

いわゆる貨客兼用自動車の後部座席の

背もたれ部分を前方に倒して折り畳み、

折り畳まれた後部座席背もたれ部分の背面と

車両後部の荷台部分とを一体として

利用している状態にあったというのであるから、

右の状態においては、後部座席はもはや座席が

本来備えるべき機能、構造を喪失していたものであって、

右の場所は、搭乗者傷害条項にいう

「正規の乗車用構造装置のある場所」

に当たらないというべきである。

 

したがって、これと異なる判断の下に、

Eが搭乗者傷害条項にいう

「正規の乗車用構造装置のある場所に搭乗中の者」に該当するとして、

被上告人らの保険金請求を認容した原審の判断には、

保険契約の解釈を誤った違法があり、

この違法は原判決の結論に影響することが明らかである。

 

論旨は理由があり、原判決中上告人敗訴の部分は破棄を免れない。

そして、前に説示したところによれば、

被上告人らの本件保険金請求は理由がないことが明らかであるから、

これを棄却すべきであり、これと結論を同じくする

第一審判決は正当であって、被上告人らの控訴は棄却すべきものである。

 

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