行政事件訴訟法25条2項の「処分により生ずる回復の困難な損害」
(平成15年3月11日最高裁)
事件番号 平成14(行フ)11
最高裁判所の見解
本件は,抗告人から平成14年9月10日付けで
戒告する旨の処分(以下「本件処分」という。)を受けた相手方が,
本件処分の効力又はその手続の続行として
日本弁護士連合会会則(以下「会則」という。)97条の3第1項5号に基づく
公告(以下「本件公告」という。)が行われると,
相手方の弁護士としての社会的信用等が低下するなどして
回復し難い損害を被るとして,主位的に本件処分の効力の停止を,
予備的に本件処分に基づく手続の続行の停止を求める事件である。
弁護士に対する戒告処分は,それが当該弁護士に告知された時に
その効力が生じ,告知によって完結する。
その後会則97条の3第1項に基づいて行われる公告は,
処分があった事実を一般に周知させるための手続であって,
処分の効力として行われるものでも,
処分の続行手続として行われるものでもないというべきである。
そうすると,本件処分の効力又はその手続の続行を停止することによって
本件公告が行われることを法的に阻止することはできないし,
本件処分が本件公告を介して第三者の知るところとなり,
相手方の弁護士としての社会的信用等が低下するなどの事態を生ずるとしても,
それは本件処分によるものではないから,これをもって
本件処分により生ずる回復困難な
損害に当たるものということはできない。
これと異なる原審の判断には,
裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,
原決定は破棄を免れない。論旨は理由がある。
そして,以上によれば,本件申立ては,却下すべきものである。
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