行政事件訴訟法3条2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」

(平成20年9月10日最高裁)

事件番号  平成17(行ヒ)397

 

この裁判では、

市町村の施行に係る土地区画整理事業の

事業計画の決定と抗告訴訟の対象について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1)ア 市町村は,土地区画整理事業を

施行しようとする場合においては,

施行規程及び事業計画を定めなければならず(法52条1項),

事業計画が定められた場合においては,

市町村長は,遅滞なく,施行者の名称,事業施行期間,

施行地区その他国土交通省令で定める事項を

公告しなければならない(法55条9項)。

 

そして,この公告がされると,

換地処分の公告がある日まで,

施行地区内において,土地区画整理事業の施行の障害となる

おそれがある土地の形質の変更若しくは建築物

その他の工作物の新築,改築若しくは増築を行い,

又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくは

たい積を行おうとする者は,都道府県知事の許可を

受けなければならず(法76条1項),

これに違反した者がある場合には,都道府県知事は,

当該違反者又はその承継者に対し,

当該土地の原状回復等を命ずることができ(同条4項),

この命令に違反した者に対しては刑罰が科される(法140条)。

 

このほか,施行地区内の宅地についての

所有権以外の権利で登記のないものを有し又は有することとなった者は,

書面をもってその権利の種類及び内容を施行者に

申告しなければならず(法85条1項),

施行者は,その申告がない限り,これを存しないものとみなして,

仮換地の指定や換地処分等をすることが

できることとされている(同条5項)。

 

また,土地区画整理事業の事業計画は,

施行地区(施行地区を工区に分ける場合には施行地区及び工区),

設計の概要,事業施行期間及び資金計画という

当該土地区画整理事業の基礎的事項を

一般的に定めるものであるが(法54条,6条1項),

事業計画において定める設計の概要については,

設計説明書及び設計図を作成して定めなければならず,

このうち,設計説明書には,事業施行後における

施行地区内の宅地の地積(保留地の予定地積を除く。)の合計の

事業施行前における施行地区内の宅地の地積の

合計に対する割合が記載され(これにより,

施行地区全体でどの程度の減歩がされるのかが分かる。),

設計図(縮尺1200分の1以上のもの)には,

事業施行後における施行地区内の公共施設等の位置及び形状が,

事業施行により新設され又は変更される部分と既設のもので

変更されない部分とに区別して表示されることから

(平成17年国土交通省令第102号による

改正前の土地区画整理法施行規則6条),

事業計画が決定されると,当該土地区画整理事業の施行によって

施行地区内の宅地所有者等の権利にいかなる影響が及ぶかについて,一

定の限度で具体的に予測することが可能になるのである。

 

そして,土地区画整理事業の事業計画については,

いったんその決定がされると,特段の事情のない限り,

その事業計画に定められたところに従って

具体的な事業がそのまま進められ,その後の手続として,

施行地区内の宅地について換地処分が当然に行われることになる。

 

前記の建築行為等の制限は,

このような事業計画の決定に基づく

具体的な事業の施行の障害となるおそれのある事態が

生ずることを防ぐために法的強制力を伴って設けられているのであり,

しかも,施行地区内の宅地所有者等は,

換地処分の公告がある日まで,

その制限を継続的に課され続けるのである。

 

そうすると,施行地区内の宅地所有者等は,

事業計画の決定がされることによって,

前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って

換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ,

その意味で,その法的地位に

直接的な影響が生ずるものというべきであり,

事業計画の決定に伴う法的効果が一般的,

抽象的なものにすぎないということはできない。

 

イ もとより,換地処分を受けた宅地所有者等や

その前に仮換地の指定を受けた宅地所有者等は,

当該換地処分等を対象として取消訴訟を提起することができるが,

換地処分等がされた段階では,実際上,既に工事等も進ちょくし,

換地計画も具体的に定められるなどしており,

その時点で事業計画の違法を理由として

当該換地処分等を取り消した場合には,

事業全体に著しい混乱をもたらすことになりかねない。

 

それゆえ,換地処分等の取消訴訟において,

宅地所有者等が事業計画の違法を主張し,

その主張が認められたとしても,

当該換地処分等を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして

事情判決(行政事件訴訟法31条1項)が

される可能性が相当程度あるのであり,

換地処分等がされた段階でこれを対象として

取消訴訟を提起することができるとしても,

宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が

十分に果たされるとはいい難い。

 

そうすると,事業計画の適否が争われる場合,

実効的な権利救済を図るためには,事業計画の決定がされた段階で,

これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性があるというべきである。

 

(2) 以上によれば,市町村の施行に係る

土地区画整理事業の事業計画の決定は,

施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって,

抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ,

実効的な権利救済を図るという観点から見ても,

これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的である。

 

したがって,上記事業計画の決定は,

行政事件訴訟法3条2項にいう

「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」

に当たると解するのが相当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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