行政指導を受けたことと建築確認の遅延との間に因果関係がないとした認定

(平成5年4月23日最高裁)

事件番号  平成3(オ)1386

 

最高裁判所の見解

原審の前記認定によれば、上告人は、

本件1の土地購入の約四箇月後には、

本件建築確認申請を提出するため事前の相談をした

大阪市建築指導部審査課から本件行政指導を受けているが、

前記目的で本件1の土地を購入した上告人としては、

これを全く無視してあくまで建築確認をすることを

行政庁に求めるのであれば格別、

右指導の趣旨に従って対応しようとするならば、

敷地の二重使用状態を作出して

本件1の土地を上告人に売却した被上告人B2商店に対し、

敷地の二重使用状態を解消するよう求めるか、

あるいは、右申請どおりのマンションの建築を断念して

同被上告人に対して売買契約の解約を求めるか、

本件1の土地に当初の計画を縮小して建物を建築するか、

又は他の目的のために転用するかしかないことになる。

 

このような立場にあった上告人が、

右のような対応を考慮しながらも、一方において、

本件行政指導の趣旨を尊重しつつ行政庁と

協議を行うなどして建築確認をすることを求めたとしても、

建築確認がされるのが相当程度遅延するであろうことは

容易に推認し得るところであるから、

上告人が本件行政指導を受けた後に本件建築確認申請を

いったん断念したのは、行政指導が

本来相手方の任意の協力を前提とするものであって

強制力を有するものではないことは当然であるとしても、

本件行政指導が有効に作用し、

上告人が任意にこれに従った結果であることは

明らかというべきである。

 

そして、上告人が、本件行政指導に従って

本件建築確認申請をいったん断念し、

被上告人B2商店に対して本訴を提起遂行している間においても、

大阪市建築指導部審査課では、大阪市長名で

被上告人B2商店に対して法九条一項に基づく命令を発し、

敷地の二重使用状態の解消を働き掛けて、

本件行政指導に沿った措置を継続していたのであり、

その後に本件建築確認がされたのは、

右命令に定められた期間を経過して、

同被上告人がこれに応じないことが明らかになったことや、

上告人において、本訴第一審訴訟手続における担当職員の証言等から、

本件行政指導にも限界があることを認識するに至ったため、

これに任意に協力する意思を放棄して、

再度本件建築確認申請をしたことによるものであることは、

原審認定事実からも明らかというべきである。

 

これを要するに、前記認定の事情に照らせば、

本件建築確認が遅延したのが、

上告人が本件行政指導を受けたことに

起因していることは経験則上否定できないから、

上告人が自らの判断で本件建築確認申請を断念したことをもって、

右因果関係をすべて否定した原審の説示には、

経験則違背ひいては審理不尽、

理由不備の違法があるといわなくてはならない

(さらに、原審の前記認定によれば、

被上告人B2商店は、敷地の二重使用状態を自ら作出し、また、

売買契約締結に際して上告人が本件1の土地を

敷地として容積率の制限一杯のマンションを

建築する目的でこれを購入することを

知っていたというのであるから、

右事実を前提とする以上、同被上告人は、

上告人に対し、売買契約当事者間において

信義則上認められる義務として、

自らが本件建物の建築確認申請をした際に

本件1の土地もその敷地の一部としていたこと、

本件建物完成直後に本件1の土地を分筆した上で

他へ売却することによって本件建物が

容積率の制限を超えることになり、

ひいては上告人が本件1の土地を購入して

これを敷地として容積率の制限一杯の建築物の

建築確認申請をするならば敷地の

二重使用に当たるとして行政上の何らかの措置が

採られて建築確認手続が遅延する可能性があることを、

説明すべき義務があるというべきである。)。

 

四 そうすると、原判決には右の違法があり、

これが原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

この点をいう論旨は理由があり、

その余の上告理由について判断するまでもなく、

原判決は破棄を免れない。

 

そこで、右に指摘した点を含めて更に審理を尽くさせるため、

本件を原審に差し戻すのが相当である。

 

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