被害者が暴行による傷害の治療中に医師の指示に従わず治療の効果が上がらなかった場合の暴行と死亡の因果関係

(平成16年2月17日最高裁)

事件番号  平成15(あ)1716

 

最高裁判所の見解

被告人は,外数名と共謀の上,深夜,飲食店街の路上で,

被害者に対し,その頭部をビール瓶で殴打したり,

足蹴にしたりするなどの暴行を加えた上,共犯者の1名が

底の割れたビール瓶で被害者の後頸部等を突き刺すなどし,

同人に左後頸部刺創による左後頸部血管損傷等の傷害を負わせた。

 

被害者の負った左後頸部刺創は,頸椎左後方に達し,

深頸静脈,外椎骨静脈沿叢などを損傷し,

多量の出血を来すものであった。

 

(2)被害者は,受傷後直ちに知人の運転する車で病院に赴いて受診し,

翌日未明までに止血のための緊急手術を受け,術後,

いったんは容体が安定し,担当医は,加療期間について,

良好に経過すれば,約3週間との見通しを持った。

 

(3)しかし,その日のうちに,被害者の容体が急変し,

他の病院に転院したが,

事件の5日後に上記左後頸部刺創に基づく

頭部循環障害による脳機能障害により死亡した。

 

(4)被告人は,原審公判廷において,上記容体急変の直前,

被害者が無断退院しようとして,体から治療用の管を抜くなどして暴れ,

それが原因で容体が悪化したと聞いている旨述べているところ,

被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったことが

治療の効果を減殺した可能性があることは,

記録上否定することができない。

 

以上のような事実関係等によれば,

被告人らの行為により被害者の受けた前記の傷害は,

それ自体死亡の結果をもたらし得る身体の損傷であって,

仮に被害者の死亡の結果発生までの間に,

上記のように被害者が医師の指示に従わず安静に努めなかったために

治療の効果が上がらなかったという事情が介在していたとしても,

被告人らの暴行による傷害と被害者の死亡との間には

因果関係があるというべきであり,

本件において傷害致死罪の成立を認めた原判断は,正当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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