覚せい剤取締法違反

(平成7年12月5日最高裁)

事件番号  平成6(あ)609

 

最高裁判所の見解

麻薬特例法一条は、薬物犯罪による不法収益等をはく奪すること等により、

薬物犯罪の主要な要因を国際的な協力の下に除去し、

薬物犯罪の助長を防止するとともに、

これに関する国際約束等を適確に実施することを目的として、

薬物犯罪を規制する麻薬及び向精神薬取締法、

大麻取締法、あへん法及び

覚せい剤取締法(以下「薬物四法」という。)の

特例等を定める旨規定する。

 

そして麻薬特例法一四条ないし一七条は、

必要的没収等の具体的な対象として、

薬物犯罪の犯罪行為により得た財産等の「不法収益」と、

不法収益の対価として得た財産等の「不法収益に由来する財産」等を規定し、

他方、薬物四法は、薬物犯罪の犯罪行為自体を処罰するとともに、

薬物四法が規制する薬物の必要的没収を規定している。

 

そうすると、麻薬特例法は、

従前の薬物四法による必要的没収の規定を

補完するために立法されたものというべきであって、

薬物犯罪による「不法収益」だけではなく、それが変形、

転換した「不法収益に由来する財産」をも必要的没収の対象とし、

更に没収ができない場合にはその価額を追徴することとし、もって、

「不法収益」の循環を断ち切るとともに、

「不法収益」を全面的にはく奪することにより、

経済面から薬物犯罪を禁圧しようとするものと解される。

 

このような麻薬特例法の立法趣旨に徴すると、

「不法収益」により規制薬物を購入した場合のように、

「不法収益」が薬物犯罪の介在により規制薬物に

変形、転換したときには、右規制薬物は、

薬物四法による別個の薬物犯罪を構成するものとして

必要的没収の対象となるのであるから、

もはや右規制薬物は、麻薬特例法にいう

「不法収益に由来する財産」には該当しないというべきであり、

右の「不法収益」は、規制薬物に転化したため没収することが

できないのであるから、その価額を追徴すべきことになる。

 

ちなみに、この場合、「不法収益」の追徴は、

「不法収益」を生じる原因となった

薬物犯罪に基づいてされるのに対し、

「不法収益」が変形、転換した規制薬物の没収は、

新たな薬物犯罪に基づいてされるのであるから、

いわゆる二重処罰の問題を生じることはないのである。

 

したがって麻薬特例法にいう「不法収益に由来する財産」には、

「不法収益」が薬物き罪の介在により規制薬物に

変形、転換した場合を含まないと解するのが相当であり、

被告人が営利目的で所持していた覚せい剤が不法収益である

現金合計一万六〇〇〇円に由来する財産ではなく、

右不法収益である右現金は没収することができないとして、

その価を追徴すべきものとした原判断は正当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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