親子関係不存在確認請求事件

(平成20年3月18日最高裁)

事件番号  平成18(受)2056

 

この裁判は、

大韓民国の国籍を有するAとその嫡出子として

同国の戸籍に記載されているYとの間の実親子関係について

Aの子であるXらが不存在確認請求をすることが

権利の濫用に当たらないとした原審の判断に,

同国の民法の解釈適用を誤った違法があるとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

(1) 韓国民法865条が定める実親子関係不存在確認請求訴訟は,

実親子関係という基本的親族関係の存否について

関係者間に紛争がある場合に対世的効力を有する判決をもって

画一的確定を図り,これにより実親子関係を公証する戸籍の記載の

正確性を確保する機能を有するものであると解されるから,

真実の実親子関係と戸籍の記載が異なる場合には,

実親子関係が存在しないことの確認を

求めることができるのが原則というべきである。

 

しかしながら,上記戸籍の記載の正確性の要請等が

例外を認めないものではないことは,

韓国民法が嫡出否認の訴えに出訴期間を定め(847条1項),

嫡出承認後には上記訴えを提起することを許さない(852条)など,

一定の場合に戸籍の記載を真実の実親子関係と合致させることについて

制限を設けていることから明らかである。

 

真実の親子関係と異なる出生の届出に基づき

戸籍上甲の実子として記載されている乙が,

甲との間で長期間にわたり実の親子と同様に生活し,

関係者もこれを前提として社会生活上の関係を形成してきた場合において,

実親子関係が存在しないことを判決で確定するときは,

虚偽の届出について何ら帰責事由のない乙に軽視し得ない

精神的苦痛,経済的不利益を強いることになるばかりか,

関係者間に形成された社会的秩序が

一挙に破壊されることにもなりかねない。

 

また,甲が既に死亡しているときには,

乙は甲と改めて養子縁組の届出をする手続(韓国民法866条以下)をして

その実子の身分を取得することもできない。韓国民法2条2項は,

権利は濫用することができない旨定めているところ,

韓国大法院1977年7月26日判決(大法院判決集25-2-211)が,

養子とする意図で他人の子を自己の実子として

出生の届出をした場合に,

他の養子縁組の実質的成立要件がすべて具備されているときは,

養子縁組の効力が発生することを肯定した趣旨にかんがみても,

同項の解釈に当たって,上記のような

不都合の発生を重要な考慮要素と

することができるものというべきである。

 

そうすると,戸籍上の両親以外の第三者である丙が,

乙とその戸籍上の父である甲との間の実親子関係が存在しないことの

確認を求めている場合において,

甲乙間に実の親子と同様の生活の実体があった期間の

長さ,判決をもって実親子関係の不存在を確定することにより

乙及びその関係者の受ける精神的苦痛,経済的不利益,

改めて養子縁組届出をすることにより乙が甲の実子としての

身分を取得する可能性の有無,丙が

実親子関係の不存在確認請求をするに至った経緯及び

請求をする動機,目的,実親子関係が存在しないことが

確定されないとした場合に丙以外に

著しい不利益を受ける者の有無等の

諸般の事情を考慮し,実親子関係の不存在を確定することが

著しく不当な結果をもたらすものといえるときには,

当該確認請求は,韓国民法2条2項にいう

権利の濫用に当たり許されないものというべきである

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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