親子関係不存在確認

(平成10年7月14日最高裁)

事件番号  平成8(オ)2597

 

最高裁判所の見解

第一次上告審判決は、確かに、

本件の訴えの利益の有無を判断するに当たり、

前記二のように準再審の事由の有無についても審理すべき旨を説示している。

 

ただ、その際考慮すべきは、本件審判についての本来の準再審事由は、

子の血縁上の父に特別養子縁組を成立させる審判手続に関与する機会を

与えなかったことであると解されることである

(民訴法三四九条、三三八条一項三号参照)。

 

しかし、血縁上の父であっても、

民法八一七条の六ただし書に該当する事由が

認められるなどの特段の事情が認められる場合は、

このような父の同意を要することなく特別養子縁組を

成立させることができるから、第一次上告審判決は、

本来の再審事由から右の特段の事情がある場合を

除外すべき旨を付加したものと考えられるのである。

 

本件親子関係不存在確認訴訟は、上告人が本件審判についての

準再審手続において本件養子縁組の成立の取消しを求める適格を

取得するために提起したものと考えられるところ、

第一次上告審判決は、本件の訴えの利益を判断するためには、

本件審判に関する準再審の事由の有無を

決すべきものと判示しているかにみえる。

 

しかし、右準再審手続は、元来審判をした

裁判所の専属管轄に属するものであり(民訴法三四九条、三四〇条)、

準再審の事由の有無も、最終的には

準再審裁判所が判断するものである。

 

そして、仮に、原審が準再審の事由が

認められないとして訴えの利益を否定し、

本件訴えを却下したならば、上告人はこれにより本件審判についての

準再審の申立てのみちを閉ざされる結果に至る。

 

一方、民法八一七条の六ただし書に該当する事由は、

本来はその性質上、家庭裁判所が審判の手続において

判断すべき事柄であり、また、

科学調査制度等を有する家庭裁判所が判断するのに適した事項である。

 

これらの諸点を考慮すると、第一次上告審判決の意味するところは、

本件の訴えの利益の有無を判断するに当たり、

準再審の事由がないことか明白である場合は格別、準再審の事由がないとはいえず

準再審開始の可能性がある場合には、子の血縁上の父と主張する者に対し、

準再審のみちを閉ざさないよう

配慮すべきことを説示したものと考えられるのである。

 

そのことは、本件について、民法八一七条の六

ただし書に該当する事由があるか否かを

判断するに当たっても同様であって、

もしそのような明白な事由が存在し、

もはや家庭裁判所の判断を要しないと判断される場合には、

訴えの利益を否定することができるが、

右ただし書に該当することが明白な事由の存在するとはいえない場合には、

訴えの利益を否定することはできないと解するのが相当である。

 

これを本件について見ると、前記原審の認定事実をもってしては、

 

いまだ、上告人が被上告人B1を虐待し又は悪意で遺棄したなどの

右ただし書に該当することが明白であるとすべき事由が存在するとはいえないから、

これのみをもって直ちに本件の訴えの利益を否法するのは相当とはいえず、

これと異なる見解に立って本件につき訴えの利益を否定した原審の判断には、

法令の解釈適用を誤った違法があり、

この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

この趣旨をいう論旨は理由があるから、原判決は破棄を免れない。

そして、本件については、更に審理を尽くさせる必要があるので、

これを原審に差し戻すこととする。

 

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