親族が居住者と別に事業を営む場合における所得税法56条の適用の有無

(平成16年11月2日最高裁)

事件番号  平成16(行ツ)23

 

最高裁判所の見解

所得税法56条は,事業を営む居住者と密接な関係にある者が

その事業に関して対価の支払を受ける場合に

これを居住者の事業所得等の金額の計算上必要経費に

そのまま算入することを認めると,納税者間における

税負担の不均衡をもたらすおそれがあるなどのため,

居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が

その居住者の営む事業所得等を生ずべき事業に従事したこと

その他の事由により当該事業から対価の支払を受ける場合には,

その対価に相当する金額は,その居住者の当該事業に係る

事業所得等の金額の計算上,必要経費に算入しないものとした上で,

これに伴い,その親族のその対価に係る各種所得の

金額の計算上必要経費に算入されるべき金額は,

その居住者の当該事業に係る事業所得等の金額の計算上,

必要経費に算入することとするなどの措置を定めている。

 

同法56条の上記の趣旨及びその文言に照らせば,

居住者と生計を一にする配偶者その他の親族が

居住者と別に事業を営む場合であっても,

そのことを理由に同条の適用を否定することはできず,

同条の要件を満たす限りその適用があるというべきである。

 

同法56条の上記の立法目的は正当であり,

同条が上記のとおり要件を定めているのは,

適用の対象を明確にし,簡便な税務処理を可能にするためであって,

上記の立法目的との関連で不合理であるとはいえない。

 

このことに,同条が前記の必要経費算入等の

措置を定めていることを併せて考えれば,

同条の合理性を否定することはできないものというべきである。

 

他方,同法57条1項は,青色申告書を提出することにつき

税務署長の承認を受けている居住者と生計を一にする配偶者

その他の親族で専らその居住者の営む前記の事業に従事するものが

当該事業から給与の支払を受けた場合には,

所定の要件を満たすときに限り,政令の定める状況に照らし

その労務の対価として相当であると認められるものの限度で,

その居住者のその給与の支給に係る年分の当該事業に係る

事業所得等の金額の計算上,必要経費に算入するなどの措置を規定し,

同条3項は,上記以外の居住者に関しても,

同人と生計を一にする配偶者その他の親族で

専らその事業に従事するものがいる場合について

一定の金額の必要経費への算入を認めている。

 

これは,同法56条が上記のとおり定めていることを前提に,

個人で事業を営む者と法人組織で事業を営む者との間で

税負担が不均衡とならないようにすることなどを考慮して

設けられた規定である。

 

同法57条の上記の趣旨及び内容に照らせば,

同法が57条の定める場合に限って56条の例外を認めていることについては,

それが著しく不合理であることが明らかであるとはいえない。

 

以上によれば,本件各処分は,同法56条の適用を誤ったものではなく,

憲法14条1項に違反するものではない。

 

このことは,当裁判所の判例(最高裁昭和55年(行ツ)第15号

同60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁)

の趣旨に徴して明らかである。

 

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