証券取引法(平成9年法律117号による改正前のもの)166条1項4号

(平成15年12月3日最高裁)

事件番号  平成13(あ)12

 

最高裁判所の見解

(1) 磁気カード等の製造,販売等を目的として設立された

A株式会社(以下「A」という。)は,平成7年6月下旬ころ,

電子計算機による情報システムの開発,運用等を営む株式会社で,

発行する株券を日本証券業協会に登録しているC株式会社(以下「C」という。)に対し,

韓国のB株式会社が開発した非接触型ICカードにつき

Aが保有する日本での独占的販売権の買収を持ち掛けた。

 

Aの代表取締役専務である被告人を含むAとCの幹部らが交渉したところ,

同年8月下旬ころ,両会社が共同してICカードの

事業化を図る旨大筋で合意に達し,同年9月14日ころ,

両会社間において,AはCに対し日本での独占的販売権を許諾すること,

許諾に対する対価は協議の上別途契約を

締結することなどを内容とする「基本合意書」に調印して,

本件基本合意が締結された。

 

(2) Cの代表取締役社長Dは,Aが保有する独占的販売権を

法律的にどのような方法で取得するかに関し,

当初,営業の譲受け,Aの買収,Aとの合併等について検討していたが,

次第にAとの合併以外にはないと考えるようになり,

同年11月9日ころ,Aとの合併を決定した。

 

一方,被告人は,本件基本合意を締結した後,Cの担当者との間で,

同会社に独占的販売権を取得させる方法等につき交渉を重ね,

その過程で,遅くとも同月20日ころまでに

Dが両会社を合併する旨決定した事実を知った。

 

2 以上の事実関係によれば,Aの代表取締役専務であった被告人は,

本件基本合意を締結したことによって,

合併の決定等のCへの投資判断に影響を及ぼす情報を

知り得る立場に立ったものであり,

本件基本合意で予定されていたというべき

独占的販売権を取得させる方法に関するC側との交渉を行う過程で,

Cの代表取締役社長が両会社を合併する旨決定したという

重要事実を知ったと認められるから,被告人において

上記重要事実に関する情報を得たことが平成9年法律第117号による

改正前の証券取引法166条1項4号にいう

「当該契約の履行に関し知つたとき」に当たるのは明らかである。

 

所論は,同法166条1項4号にいう「当該契約」は

重要事実を前提として締結される契約に限定されるべきである旨主張するが,

そのように解すべき根拠はない。

 

したがって,被告人に対し同法200条6号,166条1項4号,2項1号へ

違反の罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の判断は,正当である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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