証券取引法79条の20第3項2号に規定する「証券業に係る取引」と証券会社が同取引を仮装して行った取引

(平成18年7月13日最高裁)

事件番号  平成17(受)1327

 

この裁判では、

証券取引法79条の20第3項2号に規定する

「証券業に係る取引」と証券会社が同取引を仮装して行った取引について

裁判所が見解を示しました。

 

最高裁判所の見解

(1) 本件各社債取引は,飽くまでA証券と

本件各社債取引者らとの間の取引であり,

本件各社債取引者らが関与しない本件各社債発行会社と

A証券との間の本件各社債募集取扱契約とは別個の取引であるから,

同契約が不成立又は無効であったとしても,

そのことから当然に本件各社債取引が証券業に係る

取引の該当性を有しないことにはならないというべきである。

 

(2) また,前記のとおり,基金は,

会員である証券会社が顧客資産の返還に係る債務の円滑な履行をすることが

困難であるとの認定をした場合に,認定証券会社の一般顧客の請求に基づいて,

一般顧客が認定証券会社に対して有する顧客資産に係る債権であって

認定証券会社による円滑な弁済が困難であると

認められるもの(補償対象債権)につき

一定の金額を支払う等の業務を行うことにより投資者の保護を図り,

もって証券取引に対する信頼性を

維持することを目的として設けられたものである。

 

したがって,認定証券会社が一般顧客から預託を受けた金銭であっても,

顧客資産,すなわち証券業に係る取引に関して

預託を受けた金銭に係る債権でなければ補償対象債権には当たらない

(法79条の20第3項2号,79条の56)が,

補償対象債権の支払によって投資者の保護,

ひいては証券取引に対する信頼性の維持を図るという,

基金が設けられた趣旨等にかんがみると,証券業に係る取引には,

証券会社が,証券業に係る取引の実体を有しないのに,

同取引のように仮装して行った取引も

含まれると解するのが相当である。

 

もっとも,上記趣旨等からして,当該証券会社と取引をする者が,

取引の際,上記仮装の事実を知っていたか,

あるいは,知らなかったことにつき重大な過失があるときには,

当該取引は証券業に係る取引の該当性が

否定されるものというべきである。

 

これを本件についてみると,前記確定事実によれば,

本件各社債取引者らは,

A証券がした本件各社債の募集に応じて,

A証券に対し,本件各社債の引受けの申込みをし,

本件預託金を払い込んだものであり,本件各社債取引は,

証券会社とその顧客との間における社債取引として

行われたものであるということができる。

 

そうすると,本件各社債取引がA証券によって

証券業に係る取引のように仮装されたものであるとしても,

本件各社債取引者らが,本件各社債取引の際,

そのことを知っていたか,あるいは,

知らなかったことにつき重大な過失があるという事情がない限り,

本件各社債取引は証券業に係る取引に当たると解すべきである。

 

以上によれば,前記理由付けをもって

本件各社債取引が証券業に係る取引に

当たらないとした原審の前記判断には,

判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

 

論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,

原判決のうち上告人らに関する部分は破棄を免れない。

 

そして,上告人らが補償対象債権を有するか否か等について

更に審理を尽くさせるため,

上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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