詐害行為の受益者と取消債権者の債権の消滅時効の援用

(平成10年6月22日最高裁)

事件番号  平成6(オ)586

 

最高裁判所の見解

民法一四五条所定の当事者として消滅時効を援用し得る者は、

権利の消滅により直接利益を受ける者に限定されるところ

(最高裁平成二年(オ)第七四二号同四年三月一九日第一小法廷判決・

民集四六巻三号二二二頁参照)、詐害行為の受益者は、

詐害行為取消権行使の直接の相手方とされている上、

これが行使されると債権者との間で詐害行為が取り消され、

同行為によって得ていた利益を失う関係にあり、

その反面、詐害行為取消権を行使する債権者の債権が

消滅すれば右の利益喪失を免れることができる地位にあるから、

右債権者の債権の消滅によって直接利益を受ける者に当たり、

右債権について消滅時効を援用することが

できるものと解するのが相当である。

 

これと見解を異にする大審院の判例

(大審院昭和三年(オ)第九〇一号同年一一月八日判決・

民集七巻九八〇頁)は、変更すべきものである。

 

これを本件についてみると、前示の事実関係によれば、

上告人は、亡Eから本件不動産の贈与を受けた

詐害行為の受益者であるから、詐害行為取消権を行使する

債権者である被上告人の亡Eに対する求償債権の

消滅時効を援用し得るというべきであり、

被上告人のFに対する債権についても、

右債権が消滅すれば亡Eに対する

連帯保証債務履行請求権は当然に消滅するので、

その消滅時効を援用し得るというべきである。

 

したがって、以上と異なり、上告人は右各債権の

消滅時効を援用し得る立場にないと判断した原判決には、

民法一四五条の解釈適用を誤った違法があるというべきであり、

その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨は理由があり、その余の上告理由について

判断するまでもなく原判決は破棄を免れない。

 

そして、記録によれば、被上告人が債務者の承認による

時効の中断等の再抗弁を主張していることがうかがわれるから、

消滅時効の成否について更に審理を尽くさせるため、

本件を原審に差し戻すこととする。

 

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