詐欺罪の成否
(平成14年10月21日最高裁)
事件番号 平成13(あ)1277
最高裁判所の見解
預金通帳は,それ自体として
所有権の対象となり得るものであるにとどまらず,
これを利用して預金の預入れ,払戻しを受けられるなどの
財産的な価値を有するものと認められるから,
他人名義で預金口座を開設し,それに伴って
銀行から交付される場合であっても,
刑法246条1項の財物に当たると解するのが相当である。
そして,被告人は,上記のとおり,銀行窓口係員に対し,
自己がA本人であるかのように装って預金口座の開設を申し込み,
その旨誤信した同係員から
貯蓄総合口座通帳1冊の交付を受けたのであるから,
被告人に詐欺罪が成立することは明らかである。
そうすると,詐欺罪の成立を否定した原判決には,
刑法246条1項の解釈適用を
誤った違法があるというべきである。
ところで,本件詐欺罪の対象となった上記通帳自体の価額は
少額であることに加え,本件詐欺罪は,
有印私文書偽造罪,同行使罪と牽連犯の関係にあるところ,
これらの罪については有罪とされており,しかも,
以上は,他の9件の窃盗罪等と併合罪の関係にあると
されていることなどを考慮すると,上記法令違反をもって
刑訴法411条により原判決を破棄しなければ
著しく正義に反するものとは認められない。
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