譲渡担保権者から目的不動産を譲り受けた第三者と譲渡担保権設定者の清算金支払請求権の消滅時効の援用

(平成11年2月26日最高裁)

事件番号  平成7(オ)690

 

最高裁判所の見解

譲渡担保権者から被担保債権の弁済期後に

譲渡担保権の目的物を譲り受けた第三者は、

譲渡担保権設定者が譲渡担保権者に対して有する清算金支払請求権につき、

消滅時効を援用することができるものと解するのが相当である。

 

けだし、民法一四五条所定の当事者として消滅時効を援用し得る者は、

権利の消滅により直接利益を受ける者に限定されるところ

(最高裁昭和三九年(オ)第五二三号、

第五二四号同四二年一〇月二七日第二小法廷判決・

民集二一巻八号二一一〇頁、

最高裁昭和四五年(オ)第七一九号同四八年一二月一四日第二小法廷判決・

民集二七巻一一号一五八六頁参照)、

右第三者は、所有権に基づき、目的物を占有する譲渡担保権設定者に対して

その引渡しを求めても、譲渡担保権設定者が譲渡担保権者に対する

清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張したときには、

無条件でその引渡しを受けることができず、また、

留置権に基づく競売がされたときにはこれにより目的物の

所有権を失うことがあるという制約を受けているが、

清算金支払請求権が消滅することにより目的物の所有権についての

右制約を免れることができる地位にあり、

清算金支払請求権の消滅によって直接利益を

受ける者に当たるということができるからである。

 

譲渡担保権設定者は、右第三者に対する行為により清算金支払請求権の

消滅時効を中断する方法を有しないが、

債務者である譲渡担保権者に対してその消滅時効を中断する措置を講ずれば、

被担保債権の存続する限り目的物を留置し得るという留置権の性質上、

右第三者に対してもその効力が及ぶことになるから、

右のように解しても譲渡担保権設定者に不当に不利益を及ぼすものではない。

 

これを本件についてみると、前示の事実関係によれば、

上告人は、Dから被担保債権の弁済期後に譲渡担保権の

目的物である本件土地及び本件建物の贈与を受けた第三者であるから、

清算金支払請求権の消滅時効を援用することができる者に当たり、また、

上告人が消滅時効を援用した時点で被上告人が清算金支払請求権を

取得した時から既に一〇年が経過していることは明らかであるから、

被上告人が譲渡担保権者であるDに対し、

右清算金支払請求権の消滅時効を中断する措置を講じた旨の

主張立証のない本件においては、

被上告人の右清算金との引換給付の抗弁は失当であり、

被上告人に対し本件建物の明渡しを求める上告人の

本件請求は無条件で認容すべきものである。

 

したがって、右と異なり、上告人は右請求権の

消滅時効を援用することができないとして、

被上告人に対し清算金の支払を受けるのと引換えに

本件建物の明渡しを命じた原判決には、

民法一四五条の解釈適用を誤った違法があり、

右違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。

 

論旨は、これと同旨をいうものとして理由があり、

原判決は破棄を免れない。

 

そして、右と結論を同じくする第一審判決は正当であり、

被上告人の控訴は棄却すべきものである。

よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

判例をわかりやすく解説コーナー


スポンサードリンク