財産管理を怠る事実の違法確認請求事件

(平成24年2月16日最高裁)

事件番号  平成23(行ツ)122

 

この裁判は、

市が連合町内会に対し市有地を無償で神社施設の敷地としての

利用に供している行為の違憲性を解消するための手段として,

氏子集団による上記神社施設の一部の移設や撤去等と併せて市が

上記市有地の一部を上記氏子集団の氏子総代長に

適正な賃料で賃貸することが,

憲法89条,20条1項後段に違反しないとされた事例です。

 

最高裁判所の見解

本件手段は,市が,前掲平成22年1月20日大法廷判決の前記判示を踏まえ,

本件利用提供行為の前示の違憲性を是正解消するために,

これを採る方針を策定したものである。

 

そして,本件手段が実施されると,それまで無償で利用に供されていた

本件賃貸予定地につき,適正な賃料が利用の対価として

市に支払われることとなり,また,本件祠と本件鳥居の敷地として

利用される市有地の部分が大幅に縮小されるとともに,

本件土地1のうち本件賃貸予定地の範囲を外見的にも

明確にする措置が執られることにより,

本件氏子集団の利用し得る部分が事実上拡大することの防止も確保される上,

本件祠の移設,本件神社の表示の撤去,

本件地神宮の文字の彫り直し等の措置が執られることにより,

本件賃貸予定地以外の部分からは,本件神社の徴表となる物件や表示は

除去されるに保管されていた本件神社に関連する物品等は,

前記第1の2(5)のとおり,既に撤去されている。)。

 

加えて,前記事実関係等によれば,

本件賃貸予定地が国道に面しており,

本件建物内に保管されていた本件神社に関連する物品等が

既に撤去されているため,本件手段の実施後に

本件氏子集団が本件祠の移設された本件賃貸予定地において

祭事等を行う場合に,本件各土地のうち本件賃貸予定地以外の部分や

本件建物を使用する必要はないものということができる。

 

これらの事情のほか,本件神社物件の前身である施設は

本件土地1及び4が市制施行前の町有地となる前から

上記各土地上に存在しており,上記各土地が町有地となったのも,

小学校敷地の拡張に協力した用地提供者に報いるという

世俗的,公共的な目的によるものであって,

本件神社を特別に保護,援助するという目的に

よるものではなかったといえることも併せて

総合考慮すると,本件手段が実施された場合に,

本件氏子集団が市有地の一部である本件賃貸予定地において

本件鳥居及び本件祠を維持し,年に数回程度の祭事等を

今後も継続して行うことになるとしても,

一般人の目から見て,市が本件神社ないし

神道に対して特別の便益を提供し援助していると

評価されるおそれがあるとはいえないというべきである。

 

他方,本件神社物件を全て直ちに撤去させるべきものとすることは,

本件氏子集団がこれを利用してごく平穏な態様で

行ってきた祭事等の宗教的活動の継続を著しく困難なものにし,

その構成員の信教の自由に重大な不利益を及ぼすことが明らかである。

 

これに対し,前記事実関係等によれば,本件氏子集団は,

年額約3万5000円の賃料を負担することによって,

本件賃貸予定地において従前と同様の祭事等を行うことが可能となり,

本件祠の移設や本件地神宮の彫り直しについても費用負担の点を含めて

了承しているというのであるから,本件手段の実施による

本件氏子集団の構成員の宗教的活動に対する影響は

相当程度限定されたものにとどまるということができる。

 

そうすると,本件手段は,本件利用提供行為の前示の

違憲性を解消する手段として合理性を有するものと解するのが相当である。

 

(3) そして,本件手段は,適正な対価による貸付けであるので,

その実施には市議会による議決を要するものではなく

(地方自治法96条1項6号,237条2項参照),また,

前記事実関係等によれば,本件手段は,市の担当者が,

氏子総代長であり本件町内会の元会長であったGと度々面談し,

同人を介して本件氏子集団の役員らや本件町内会の会長らと

協議を重ねてその意見を聴取し,本件氏子集団の

役員会の了解を取り付けた上で策定したものであって,

既に本件神社の表示の撤去が実施され,

本件祠の移設や本件地神宮の彫り直しも費用負担の点を含めて

本件氏子集団の了承が得られており,他方,

本件賃貸予定地に係る年額約3万5000円の賃料の支払が

将来滞る蓋然性があるとは考え難いことを併せ考えると,

本件手段は確実に実施が可能なものということができ,

その現実性を優に肯定することができる。

 

(4) したがって,本件手段は,本件利用提供行為の

前示の違憲性を解消するための手段として

合理的かつ現実的なものというべきであり,市が,

本件神社物件の撤去及び本件土地1の明渡しの請求の方法を採らずに,

本件手段を実施することは,憲法89条,20条1項後段に

違反するものではないと解するのが相当である。

 

このことは,当裁判所大法廷判決(最高裁昭和46年(行ツ)

第69号同52年7月13日大法廷判決・

民集31巻4号533頁,最高裁平成19年(行ツ)第334号

同22年1月20日大法廷判決・民集64巻1号128頁)の

趣旨に徴して明らかというべきである。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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