賃貸建物の新旧所有者が賃貸人の地位を旧所有者に留保する旨を合意した場合における賃貸人の地位の帰すう

(平成11年3月25日最高裁)

事件番号  平成7(オ)1705

 

最高裁判所の見解

本件は、建物所有者から建物を賃借していた被上告人が、

賃貸借契約を解除し右建物から退去したとして、

右建物の信託による譲渡を受けた上告人に対し、

保証金の名称で右建物所有者に交付していた

敷金の返還を求めるものである。

 

二 自己の所有建物を他に賃貸して引き渡した者が

右建物を第三者に譲渡して所有権を移転した場合には、

特段の事情のない限り、賃貸人の地位もこれに伴って当然に

右第三者に移転し、賃借人から交付されていた敷金に関する

権利義務関係も右第三者に承継されると解すべきであり

(最高裁昭和三五年(オ)第五九六号同三九年八月二八日第二小法廷判決・

民集一八巻七号一三五四頁、最高裁昭和四三年(オ)

第四八三号同四四年七月一七日第一小法廷判決・

民集二三巻八号一六一〇頁参照)、

右の場合に、新旧所有者間において、

従前からの賃貸借契約における賃貸人の地位を

旧所有者に留保する旨を合意したとしても、

これをもって直ちに前記特段の事情があるものということはできない。

 

けだし、右の新旧所有者間の合意に従った法律関係が生ずることを認めると、

賃借人は、建物所有者との間で賃貸借契約を締結したにもかかわらず、

新旧所有者間の合意のみによって、建物所有権を有しない転貸人との間の

転貸借契約における転借人と同様の地位に立たされることとなり、

旧所有者がその責めに帰すべき事由によって

右建物を使用管理する等の権原を失い、

右建物を賃借人に賃貸することができなくなった場合には、

その地位を失うに至ることもあり得るなど、

不測の損害を被るおそれがあるからである。

 

もっとも、新所有者のみが敷金返還債務を履行すべきものとすると、

新所有者が無資力となった場合などには、

賃借人が不利益を被ることになりかねないが、

右のような場合に旧所有者に対して

敷金返還債務の履行を請求することができるかどうかは、

右の賃貸人の地位の移転とは別に検討されるべき問題である。

 

・全文はこちら(裁判所ホームページの本裁判のページ)

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