質権が設定されている金銭債権の被転付適格
(平成12年4月7日最高裁)
事件番号 平成11(許)42
最高裁判所の見解
質権が設定されている金銭債権であっても、
債権として現に存在していることはいうまでもなく、また、
弁済に充てられる金額を確定することもできるのであるから、
右債権は、法一五九条にいう券面額を有するものというべきである。
したがって、質権が設定されている金銭債権であっても、
転付命令の対象となる適格がある。
もっとも、転付命令が発せられ、執行債権等が券面額で
弁済されたものとみなされた(法一六〇条)後に、
質権が実行された結果、執行債権者が転付された
金銭債権の支払を受けられないという事態が生ずることがある。
その場合には、転付命令により執行債権者が取得した債権によって
質権の被担保債権が弁済されたことになるから、
執行債権者は、支払を受けられなかった金額について
執行債務者に対する不当利得返還請求などをすることが
できるものと解すべきである(大審院大正一三年(オ)
第九二三号同一四年七月三日判決・民集四巻六一三頁参照)。
三 以上によれば、原審の前記判断には、
法令の解釈適用を誤った違法があり、
右違法が裁判に影響を及ぼすことは明らかである。
論旨は理由があり、原決定は破棄を免れない。
そして、抗告人の本件債権に対する転付命令の申立ては、
認容すべきものである。
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